<ありな先生の楽屋>

徒然なるままに綴る・・・
久美さんの初プロデュース公演、
「やっぱりあなたが一番いいわ」



〜序〜

西暦2000年、秋・・・。
「芝居がやりたい 」
久美さんの一言から、このお芝居は始まりました・・・。


劇団21世紀FOX番外公演
西原久美子プロデュース
   「やっぱりあなたが一番いいわ」


場所:新宿シアターモリエール

 2001年2月16(金)
   18:30開場
   19:00開演
 2001年2月17日(土)
 マチネー
   13:30開場
   14:00開演
 ソワレ
   18:30開場
   19:00開演
 2001年2月18日(日)
 マチネー
   12:30開場
   13:00開演
 ソワレ
   17:30開場
   18:00開演

チケット料金
(全席自由・チケット記載の整理番号順にて入場)
 前売   3,200円
 当日   3,500円
 学生割引 3,000円
  友の会最優先予約日
 2000年12月16日(土)10:00〜15:00
ダイレクトメール優先予約日
 2000年12月17日(日)11:00〜18:00
一般前売開始日
 2000年12月18日(月)チケットぴあにて

〜CAST〜

頬緒染奴by百々麻子さん
麗歌ありなby西原久美子さん
井上琴吉by沢井純貴さん
(客演.グランヒップス)

東大by忍野タケルさん(現・宮下タケルさん)
吉川朗子by竹田愛里さん

大倉みみby大谷育江さん
(客演.マウスプロモーション)

〜STAFF〜

照明by沼澤毅さん
音楽by中島聡彦さん
照明OPby石黒貴之さん
音響OPby山本善仁さん
宣伝美術by椋地むくさん
舞台写真by安達雅充さん

舞台監督by川鍋雅樹さん

制作by劇団21世紀FOX
制作総指揮by肝付兼太さん

<FOXレンジャー>
FOXレッドby福田真也さん
古賀大賛さん
片山諭さん
FOXピンクby小沢雅子さん
佐々木恵美さん
関根通晴さん


演出=肝付兼太さん
作=内田春菊さん


 by 西


「芝居がやりたいです」

 久美さんが肝付さんに送ったメール・・・。
 とある用事のついでにそこに添えられた、久美さんの思い。もっと舞台の上に居たい、もっと喋りたい。お芝居に対する貪欲な気持ち。単純にして、どこまでも真摯な情熱。それがこのお芝居の始まりでした。
 以前より、小人数でのお芝居がやりたいと胸に貯めていた久美さんは、そのことをメールの中でお話しました。
「いいよ、番外でやれば?」
 と言う肝さんのお返事で、全ては動き出しました。

 芝居がやりたいです。
 この言葉、私は凄く好きです。
 学生さんはともかくとして、社会人は、何かがやりたいです、と、自分の情熱を上の人間に対しては、なかなか言えないものです。また言うより早く、毎日の忙しさがその口を閉じさせます。臆病風が吹き付けて、情熱を冷ましていきます。
 ストレートに自分の情熱を打ち明けた久美さんは素敵です。その思いを真摯に受け止めた肝さんも素敵です。そしてその思いに応え、舞台を成功させるために尽力したキャスト・スタッフさんたちも素敵です。

 芝居・・・。
 絵や音楽や映画や小説と違い、後にも先にも残らないものです。大道具や小道具や使われる音楽や、はたまた台本などは残るでしょう。でも演技は残りません、人の記憶の中にしか。
 五回公演なら五回、どの回も、観ている側には同じ演技を見せなければなりません。でも人間である以上、役者さんの中では今日のは良くなかった、とか、台詞をとちってしまった、とかあるでしょう。そして一回、終わればそれっきりです。やり直しはききません、二度と。
 一年経って、人やお金や種々の状況が揃えば、再演という形でまた行うことができますが、人は、変わります。一年経てば、役者さんも成長していますし、プライベートで起こった色々な事件が内面に変化をもたらしていることだってあるでしょう。
 ある一時点での役者さんの実力が結集して生まれるのが、本番の演技だと思います。だからもし、この「やっぱりあなたが一番いいわ」が2月16日ではなくて、3月16日だったら、また違う印象があったでしょうし、1月16日であっても、また違う印象を受けたことでしょう。一年違えば、尚更です。
 芝居ほど、完成した姿が不確定な世界は無いと思います。そして圧倒的なエネルギーを必要とする所業だと思います。現実には存在しない人間、その人間の全人生のうちの一瞬を、身体の全て、心の全てを使って、舞台の上に具現化させる。
 これは私の言葉ではありませんが、小説というのは、「りんごがある」と書いただけで、そこにりんごが存在してしまう恐ろしい世界です。
 久美さんは七年前までは左利きでした。風邪をひいて40度以上の熱を出し、四日間うなされた結果、気付くと今のように右利きになっていたそうです。皆さん知ってました? なんて書くと、皆さん、???と困惑されるような、そんな恐ろしい世界です。勿論、今のは大嘘ですよ。
 書き続けるのは大変ですが、書くのは案外、容易いものです。 お芝居は正に全身全霊、使って人間を表現しなければなりません。風邪で寝込んだ挙げ句、左利きになってしまったことを、回想の形にしろ、実際にうなされている様子を見せるにしろ、観ている者を納得させ、記憶に植え付けなくてはなりません。口から出た言葉は、そのまま時間と一緒に消えてしまうのですから。

 お芝居は大変です。演技は大変です。
 久美さんの頭の中にとめどない構想としてあった、小人数でのお芝居。それを、ただ、やりたいな、と心に思うだけでなく、口に出し、積極的に乗り出していった久美さんは素敵です。役者さんが自らプロデュースをなさる、と言うのは、想像を絶する大変さだと思います。
 舞台に立つにしても声のお仕事にしても、普段は演技のみをやってきた久美さんです。裏方(スタッフ)としてのお仕事も未経験ですし、更に言えば、本番前の準備のお仕事も久美さんは不得手な方です。たあこさんこと松本貴子さんと共に、「使えないコンビ」と呼ばれちゃっているくらいです(笑)。でも久美さんは場を明るくできる、劇団21世紀FOXさんには無くてはならないムードメーカーです。
 そんな久美さんが先頭に立って舞台を作っていく訳ですから、そのご苦労のほどは計り知れません。なおかつ、百々さんと共に主演として舞台に立つのです。台詞を覚え、演技も固めていかねばなりません。その中で、制作の仕事もしていくのです。衣装のこと、音楽のこと、ちらしのこと、パンフレットのこと、物販のこと、etc・・・。今、思い付くだけ上げてみても、これらのことをどうしなければならないかを考え、誰にどこに何を頼まねばならないかを考え、どこまで出来上がっているのかを把握しなければなりません。
 久美さんご自身は、プロデュースなさることに対して、大変なことを始めてしまったと後悔なさり、プレッシャーに押し潰されそうになったこともありました。勿論、始めた時はプロデュースすることの大変さは承知していたでしょうし、それを上回る気持ち、芝居がやりたいという情熱があったのだと思います。見えない何かに向かって飛び込んでいった久美さんは、人間として役者さんとして、本当に魅力的です。
 ただこればかりは、やってみなければ分からないことでもあります。実際に制作の仕事を押し進めていくうちに、その大変さが想像以上のものであると、身に染みて分かったのだと思います。
 でも久美さんには多くの助けがありました。素晴らしい仲間の方々がいらっしゃいました。
 本来なら久美さんがやるべきものであったお仕事まで引き受け、気弱な面、マイナス思考になる面もあって、なかなか物事を決められない久美さんをサポートしてくれた、舞台監督の川鍋雅樹さん(「日曜日ナビはオルガンを弾いた」では主役を張るほどの役者さんです)。
 このプロデュース公演が現実のものとなって動き出す前から、久美さんの相談に乗っていた。親方こと中島聡彦さん。
 久美さんが持ち寄ってきた沢山の本の中から、共に吟味し、「やっぱりあなたが一番いいわ」を選び出し、そして久美さん曰く、一緒に制作をしてくれた百々麻子さん。久美さんのお話では、この公演は二人のプロデュースも同然なそうなのです。
 プロデュースのお仕事でいっぱいいっぱいな状態の久美さんを励まし、小道具探しに歩き回り、同じ劇団員のように振る舞ってくれた、客演の大谷育江さん。

 久美さんは「やっぱりあなたが一番いいわ」終了後、このプロデュース公演について、お客さんに対してだけでも多くのことを反省しておられました。
 物販で用意したマグカップの数が足りなかったこと、パンフレットの数が足りず、千秋楽にはコピー紙になってしまったこと、千秋楽終演後、突然、舞台上にて挨拶を執り行ったこと・・・。初めてのプロデュース公演で不慣れなこともあり、尚かつ短い準備期間でもありました。致し方無いことですが、久美さんは大変、反省しておられました。
 しかし結果として、新宿シアターモリエールは全公演、いっぱいになり、物販コーナーも最終的には全て売り切れました。大成功のうちに幕を閉じました。これも、久美さんを助けてくれた多くの方々の力があったからこそです。
 プロデューサーの資質で、最も一番、大切なのは、周りの人間をどれだけ取り込めるか、周りの人間の協力をどれだけ得られるかです。少なくとも先頭に立つ人間には、絶対必要不可欠な力です。
 久美さんにとってこの公演は、プロデューサーとして見た場合、決して百点満点と言えるべきものではありませんでした。でも公演終了後、劇団公式HPの掲示板はどれも好意的な声で埋め尽くされました。
 久美さんには、そのセンスがあったのです。

 初っ端からこのコーナーのコンセプト通り、徒然なるままに書き連ねてみましたが、ここで、「やっぱりあなたが一番いいわ」の登場人物紹介です。

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麗歌ありな(れいかありな)
30歳
♀(←これはパンフレットの表記に倣って)
 少女漫画家。恋に悩む女の子、女の子の夢を描くのを得意とする漫画家です。
 ピンクハウスを好み、舞台では、白いワンピースの上に白い半袖のを着、下のスカート部分には、えんじ色にコスモスの花が沢山、散りばめられたものを、前が空くように巻き付けていました。ピンク色のうさぎのスリッパを履いていました。
 性格は自己中心的でわがまま。物欲の虜で、歳に似合わない、メルヘンチックなものを好みます。その一方、計算高い面もあり、夜遊びに出かけることも多々。性欲過多でフェラチオは嫌い。誕生日は年に4回来るけれど、歳は3年に一度しかとらない(笑)。好きになった男性に対する恋心は、ひどく純粋な女性です。

頬緒染奴(ほほおそめやっこ)
30歳

 主にレディースコミックで活躍する女流漫画家。ありなが描くような漫画を嫌っている。
 服装は、仕事場に相応しいラフな格好です。
 仕事に対してはとても生真面目な、さばさばした気性の女性です。言いたいこと、思っていることをずばずば言ってのける、爽快な性格。マスターベーションを気分転換のためにし、そのことを話すことをためらわない。男みたいですが、そう言われるのをひどく嫌います。

井上琴吉(いのうえこときち
27歳

 花房社(はなぶさしゃ)が近々、発刊する新しいレディースコミックの編集者。
 服装はスーツ姿です。
 仕事熱心な編集者。後先、考えず突っ走るタイプ。基本的には真面目で、騙されやすい面もあり。二枚目で気障ったらしいところもありますが、一生懸命な、いい男です。

東大(ひがしまさる)
40代?

 新雑誌の編集長。琴吉の上司です。
 服装は、スーツ姿です。
 漫画家志望の女の子と結婚した編集者で、人生の酸いも甘いも噛み分けてきたようなおじさん。話術は巧みだが、変に若者の言葉遣いを真似したりする。若い女の子が好き。

吉川朗子(よしかわろうこ)
24歳

 他の編集部から引き抜かれてきた、優秀な編集者。でも文芸部志望。
 服装は、薄いアイボリーカラーのスーツ姿です。
 東の愛人。歳の割に老けている。真綿の中にナイフを詰めたような、そんなとんがった雰囲気があります。酒乱。

大倉みみ(おおくらみみ)
24歳

 漫画家志望の女の子。ペンネームは「ミニィ・オクラホマ」(笑)。ありなと染奴の両方のアシスタントをしています。
 服装は、上はピンクに下は黄色の、可愛い系のファッションです。
 現実を少し甘く見ている子。打算的な性格の持ち主で、ありなのところで染奴の悪口を言ったと思えば、染奴のところでありなの悪口を言ったりする、性格悪さもある。非常にお喋り。

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 以上6人の男女が織り成すコメディです。紹介を読んで分かるかと思いますが、少しHな会話もあるお話です。今にして思えば、分からなかった人もいるかもしれないなあと思う言葉もあったりして(笑)。
 ありなと染奴、二人の漫画家が、関係を持ってしまった編集者、琴吉と、そして新雑誌の巻頭カラーとを巡って繰り広げられる、ドタバタコメディです。
 詳しいあらすじについては次回以降、紹介していこうと思いますが、このお芝居の上演台本である脚本が市販されています。

『さし絵の多い脚本集 やっぱりあなたが一番いいわ』
内田春菊
定価1300円にてマガジンハウスより
ISBN4ー8387ー1152ー2

 表題作の他に四編の脚本が収録されており、どれも非常に面白いものです(重いお話もありますが)。
 公演は、この脚本にほぼ忠実に舞台化されていますので、ぜひお買い求め下さい。中規模以上の本屋さんであれば、ほぼ見つかります。
 久美さんを始め、役者陣は皆さん、役のイメージにぴったりで、肝さん曰く、あてがき(この役者さんであればこう言いそう、と書き手が、役ではなく役者そのものから想像して台詞を書くこと)に間違われてしまうかもしれない、というほどです。
 公演から半年、経った今、読み返してみても、頭の中に響くのは久美さんや百々さんの声です。本当に、他の人なんて考えられないくらい、皆さん、はまり役でした。役者さんの魅力が120%発揮されていたお芝居です。
 久美さんはパンフレットの中で、ちょっと素敵なコメディになるといいな、とおっしゃっていますが、ちょっとどころではない素敵な素敵なコメディに仕上がっていました。余りなまでに生き生きとしていた登場人物、確かに伝わるその人物たちの情念、恋心、前に進もうとするパワー。それらが笑いとHでお洒落にコーティングされていて、これは舞台背景と、グッズとして販売されていたマグカップにありますが、女性の唇をモチーフにした、ピンク色のアダルトな背景・・・正にその女性の唇のように素敵なお芝居でした。

「恋も仕事も負けられない」

 久美さんがこのお芝居に対して付けたコピーです。
 ダイレクトメールやちらしに描かれているありなと染奴。これは久美さんと百々さんのお顔を元に描かれたものですが、そのお二人のイラストの間に、そんなコピーがあります。
 これは久美さんがお考えになったコピーです。
 何て力強くてストレートな、女性の眩しさを感じさせる言葉なんでしょう。ありなも染奴も形は違えど、力強さ、ストレートさ、女性の眩しさ、この3つを持っています。そしてそんな二人が互いのことを気にしながら、懸命に自分なりのやり方を貫き通し、やがて激突します。これほどぴったりなコピーも無いと思います。
 更にこの言葉から起こるのは、爆風です。
 舞い上がる砂塵さえ、赤く熱せられ、溶けていくような、熱い風・・・。この公演が記憶と化した今、もっと別な意味を、コピーから私は感じます。
 そうなんです。こんなコーナーを作ってまで、「やっぱりあなたが一番いいわ」を言葉で綴ろうとするのは、久美さん&百々さんが好きなだけではないんです。
 ビデオとして残っていないお芝居だから。
 これも理由の一つです。思い出のためにビデオ撮影は行われ、FOXさんの元にあるようですが、これは販売されません。観た人間の頭の中にしか無いから、稚拙な文章ながら色々な面から語り継ぎたい。でも理由はまだあるんです。
 あの3日間に、爆発するような何かを感じたからなんです。物凄い何かが新宿モリエールを席巻していたんです。筆を執らせたのは、それを追求したいから、それだけの価値がある公演だったからです。これからこのコーナーを進めていく中で、その何かを具体的な言葉に表すことができたらと思います。
 それでは今回はこの辺で。
 次回はお芝居そのものの中に筆を入れてみようと思います。

 
  
  

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