<音響さん>

舞台の上の久美さんの、
歌と声量について、
私なりに考察してみました。



〜TONE〜
(久美さんの歌)

 「サクラ大戦」の世界ではそれこそ沢山の数の歌を、CDや舞台の上で歌ってきた久美さんですが、劇団21世紀FOXさんの舞台においては、私が知る限りでは「アリス・イン・ワンダーランド」のみになります。舞台の性質が大きく違う故ですが、もっと聴いてみたいものです。

 その「アリス・イン・ワンダーランド」での久美さんの歌から、話を始めます。
 このお芝居で久美さんは、「電脳狐主義」というCDにも収録されていますが、「リデル」という曲を始め、数曲、ミュージカル形式でお歌いになっていました。行方不明の友達、リデルを救うために鏡の向こうの世界に旅立ったアリス。どの曲でも、透明感に溢れた綺麗な歌声を久美さんは披露されています。透明だけれども、芯の通った歌声、歌唱です。かつ心の琴線に触れる可愛らしさも、そこから消えてはいません。CDアルバムとしてまとめてもいいほど、素晴らしい歌です。

 「サクラ大戦」というゲームが発売された折り、ゲームの開発に先立ってそのキャラクターの歌がレコーディングされましたが、この時点で久美さんは、歌が非常に苦手だとおっしゃっていました。しかし、この五年以上も前に、既に久美さんは「アリス〜」にて見事な歌唱を見せています。
 そこで、考えてみました。
 「サクラ大戦」のみならず様々なゲームにおいて、久美さんは声優として多くの、キャラクターソングをお歌いになってきましたが、それらを脳裏に再生していくうち、思い付いた結論があります。
 「アリス・イン・ワンダーランド」の楽曲は、久美さんの最も得意とするタイプの曲、久美さんの声が最も映える曲だった、ということです。久美さん的に、得手不得手であったかどうかは定かではありませんが、聴いている側からすると、そう感じます。

 これは個人的に思うことですが、久美さんは、感情を込めて切々と歌い上げるような歌は、どちらかと言うと苦手で、逆に、歌声を鮮やかに魅力的に聴かせるような歌が、より得意なのではないかと思っています。
 後者は言い替えると、キャラクターの声を歌で表すことに、とっても長けていらっしゃるということです。

 私が思う一番の例は「悠久幻想曲」のメロディ役。そのテーマソング「てんしのえがお」です。猫と人間のキメラ、ピンク色の髪に猫の耳、猫の手足、しっぽを持った可愛らしいキャラクターです。赤ん坊のように無垢で純粋。人なつっこく、優しい心を持った、まだ恋も知らない少女。そういう内面的な部分を、久美さんは、役作りと共に作り上げた声で、しっかりと歌い上げています。
 メロディというキャラクターが歌を歌ったならば、間違い無くそうなる。歌い手はメロディ。そのことを逸脱することなく、お歌いになっている。他の方と比較しても、これは久美さんの強い特徴であると思います。このことは、キャラクター全員で歌った曲や、「悠久ファイナルコンサート」というイベント(ビデオ・DVD)で良く分かります。

 そして更にもう一つ例を上げると、「スーチーパイ」シリーズのミルク。一見するとただのうさぎ。が、本当は地球の制服を集めにやって来た宇宙うさぎ。変身すると、バニーガール姿の、怒涛のように喋る、お馬鹿な女の子に変わるキャラクターです。
 この役でも、久美さんは数曲、お歌いになっていますが、ひょうきんさを前面に押し出したり、可愛らしさを前面に押し出したりと、コンセプトは違ったりもしますが、どこをとってもミルクである曲になっています。

 例を上げれば、「GS美神」の六道冥子が歌う「仲良し式神たち」など、枚挙に暇が無くなるほどですが、その役の声で、内面や魅力を聴かせることに掛けては、非常に長けていると思います。
 私が知っている中で一つだけ例外を上げると、「ツインビーパラダイス」シリーズの中の一曲、伊藤美紀さんと一緒にお歌いになっている「ザ・ビギン〜冒険のはじまり〜」です。ここではウインビーというまあるいピンク色のメカの役ではなく、美しい、大人の女性の声で歌っています。歌詞の内容から、キャラクターソングとしてではなく歌っておられるのだと思いますが、この曲の久美さんは、西原久美子さんとして、抜群に素敵です。もし久美さんが素で歌う、例えば西原久美子さんとしてCDをお出しになるとしたら、こんな雰囲気なのかなと思います。

 久美さんの苦手だと思われる曲に話を戻すと、「サクラ大戦」シリーズのアイリス。「エチュード」や「愛しのジャンポール」が特に、胸の奥深くに秘めたものを、感情を込めて切々と歌っている曲で、久美さんも大変だったのではないかと思います。一方で「お花畑」。これはアイリスらしさ全開の曲で、先に上げた二つと比べると、お上手なように思います(初期と最近のものという差もありますが)。
 しかしここ最新のアイリスの曲、「君偲ぶ歌」や「ラムネの歌」では、鳥肌立つほどに、気持ちや情感がたっぷりと込められていて、素晴らしい歌唱を聴かせてくれます。「サクラ大戦」シリーズが大きく展開していく中で、次々と生まれてきた曲を歌っていくうちに。そして歌謡ショウなどで、生で何度も歌ってきた成果が一気に結実してきたような印象を受けます。
 またデュエット曲で、歌の非常にうまい役者さんと歌う中で、 色々と吸収したものもあるでしょう。「つばさ」、「希望」、「輝き」。実際、デュエット曲はどれも久美さんにとっては難しい曲だと思いますが、ソロよりもお上手なように感じます。

 さて、舞台の上の久美さんの歌です。やはり久美さんの土俵、お芝居が入っているせいでしょうか。久美さんの歌は、CDで聴くより数倍、生き生きとしたものに仕上がっています。明るいハイテンポな曲はより明るく可愛く、静かな曲は情感いっぱいに、膨らみと広がりを持って……。
 踊りながら歌うことは恐ろしく体力がいることで、久美さんご自身も、体力不足を痛感していました。しかし歌謡ショウがスタートして6年余り。踊りも心から楽しめるまでに、今では不安より楽しさが大きいほどに、上手くなりました。プロのダンサーさんに勝るとも劣らない、動きと表現力です。それに伴い、体力も付いたことでしょう。観ている側からは、そんな時があったとは信じられないほど、パワフルに踊りながら歌っています。

 劇団21世紀FOXさんのお芝居の中で、久美さんが歌う姿を観たいと、切に願う私です。役として内面を歌い上げ、キャラクターを魅力的に歌える力、心の底にあるものを深く歌い上げられる力。不足は無いはずですし、歌が入る役が来れば、久美さんは歌謡ショウで培ってきた、完成に持っていく方法、努力の仕方で、見事に演じ、歌い上げてくれることでしょう。
 エナケンシリーズ「冒険!! ロビンソン・クルウ島」においては、12分間に及ぶオペレッタがありますが、ここに久美さんが何かしらの役で登場していれば、更に素敵なシーンになっていたことと思います。と言うのは、決してひいき目だけではないでしょう。久美さんが加わるだけで、お芝居の雰囲気は変わります。間違い無く。一声一声に、存在感がある久美さんなのですから。久美さんの歌が入れば、また違う、エナケンの世界が広がったことでしょう。

 さてここからは、「サクラ」の楽曲の中で、久美さんが選んだベスト3です(『』内は久美さんのコメントです)。
*「サクラ大戦全曲集 COMPLETE SONG BOX」のブックレットに収められたコメントより
 【Special Thanks⇒AKIさん】

◎第3位
   〜エチュード〜
『歌が苦手だった私が(今は?と突っ込まないでね〜〈汗〉)歌うには、とても難しかった曲なのですが、実は大好きなのです。フランスの匂いのする、そして少女の繊細で切ない恋心がいっぱい詰まったこの曲が、アイリスのために、自分のために作られたかと思うと感動です!』
 初お目見えは初代SS版「サクラ大戦」、収録されているCDは「サクラ大戦 帝撃歌謡全集」。一番最初のアイリスの曲ですね。
 ¨好き……好き……好き……¨というフレーズに胸がきゅんとなる、アイリスの気持ちが心にじんわりと染み込んでくる切ない歌です。「あなたに釣り合う大人の女性になりたい」といったことを歌ったこの歌詞は、思えばアイリスの歌の中で、最も大人っぽい曲の一つかもしれません。
 歌の中で、アイリスの気持ちは「女の子」と「女性」の間にあります。故に大人っぽくなっているアイリスの歌声、久美さんの膨らみのある歌声が堪能できる曲でもあります。
 以前は久美さんの歌の中でも、久美さんにとって不得手な曲だろうと感じていた私でしたが、今の久美さんなら、遥かに上手に歌える曲でしょう。

◎第2位
   〜お花畑〜
『どの曲が好きかって、やはりその曲にまつわる思い出とは切ってもきれないものがありますよね。この曲はアイリスのソロとしてCDには収録されていますが、テレビアニメでは花組のみんながアイリスのお誕生日を祝うために歌ってくれた曲でもあるのです。みんなの温かい心がアイリスの孤独で閉ざされた心に染みわたっていくあのシーンは忘れられません。アイリスである私はみんなの優しい心に本当に感動したのでした。』
 初お目見えは久美さんが語っている通り、TVアニメ「サクラ大戦」の第12話「ひとりぼっちのバースデー」、収録されているCDは「サクラ大戦TVシリーズ 歌のアルバム」。アイリスの楽曲の中で、最も底抜けに明るいものです。
 心の中に無数の花びらが吹き抜けていくような、可愛らしくも爽やかな、とても素晴らしい曲。上記の「エチュード」は、アイリスの内面を表現するために久美さんご自身、深く思いを込めて歌ったということ。そこからくる、久美さんらしさ、久美さんの声が感じられた曲に対し、「お花畑」は非常に¨アイリス¨している歌であると言えるでしょう。どこを切り取ってもアイリス、という感じの曲。キャラクターの声を鮮やかに聞かせることに長けている久美さんにとっては、得意な方面のもののように思われます。
 また、久美さんがおっしゃっている通り、花組みんなで歌ってくれた「お花畑」、みんなで頑張ってアイリスのことを祝ってくれたあのお話は、アイリスならずとも泣いてしまう、本当に素敵なお話です。

◎第1位
   〜希望〜
『この曲を歌うと、まるで「青い鳥」という一本のお芝居をしているかのような気持ちになります。そこがとても好き!暗い境遇だった兄妹がやがて青い鳥をみつけ希望に満ちていく、そんなドラマチックな展開が大のお気に入りです。(1〜3位、そして今回はそれに入れなかった曲、全て、ほとんど差が無い位大好きなんです。だから3曲選べだなんて鬼〜って感じ(汗)。きっと順位は季節ごとに入れ替わるでしょう!?)』
 初お目見えはサクラ大戦2ドラマCD「青い鳥」、フルコーラスで収録されているのは、「サクラ大戦2ドラマCD 花組公演音楽集」。レニとのデュエットで、後半、ドラマチックに盛り上がっていく壮大な楽曲です。
 とっても久美さんらしさに溢れたコメントです。その時々によって変わる、ちょっと気まぐれなところもある久美さんであり、優柔不断なところをご自分で欠点に上げたこともある久美さん。そして何より、舞台が好き、舞台人な久美さんならではの言葉にとても嬉しくなります。
 楽曲自体は、久美さんのおっしゃる通りで、「青い鳥」を見つけてから、「青い鳥」の意味を知ってから一気に盛り上がっていく様が本当に素敵な曲です。鳥肌立つ、劇的な盛り上がり方は、数多ある「サクラ」の曲の中でも秀逸だと思います。特に、第1回目の新春歌謡ショウ、第2部の締めで披露された生の歌唱は、圧巻! 胸を激しく震わす感動と、そんな感動を与える役どころにもなった久美さんに誇りを感じたのでした。
 レニと美しいハーモニーを生み出す、光の粒のような久美さんの高い音、胸に訴え掛けてくる力は本物です。

 ついでに、これは完全に余談ですが、久美さんの歌、私のベスト10です。全部が全部、素敵な久美さんの歌に順位を付けるなんて無謀な試みですが、2003年3月現在のベスト10です。久美さんと同じように、季節ごとに入れ替わることでしょう(笑)。
第10位 てんしのえがお
第9位  ザ・ビギン〜冒険のはじまり〜
第8位  笑顔でいます
第7位  お花畑
第6位  夜のサンバ(アイリスバージョン)
第5位  これがアタシの純金の道
第4位  夢中に・・・ぴょん
第3位  つばさ
第2位  カラ元気じゃないよ
第1位  希望

 今でも、ご自分の歌に不安を持っている久美さん……。聴く側からすると、「下手だなんて言わせない」、そんな気持ちもあります。しかし、久美さんにとっては無意識にしろ、常に高いところに目標を置いているからこそ、久美さんは自分の実力を冷静に見つめ、努力を続け、私たちを感動させてくれるのだと思います。
 特に「サクラ」で、久美さんは鍛えられました。良い楽曲に恵まれ、様々なものを吸収し、生のステージで経験を重ねてきました。歌謡ショウで花組の誰よりも沢山、踊ったこともありました。¨継続は力なり¨。弱音を吐きながらも、久美さんは頑張り続け、やがてそれは、第1回のスーパー歌謡ショウで、飛びながら(フライングをしながら)歌う、という大役を任されることに繋がったのです。

 久美さんは、その特徴的な可愛い声質ゆえに、歌の種類が制限されがちになることもありますが、「サクラ」だけではなく他の作品の曲もお聞きになっていけば、とても可能性を秘めている人だということが分かります。様々なジャンルの曲を歌いこなせるということが分かりますし、実際、毛色の違う楽曲を沢山、且つ魅力的に歌ってきました。
 声優のお仕事で聞くことのできる、高くて可愛らしい声から低くて魅力的な声まで、鮮やかに出すことができる幅広い声域、そしてそれが起因と思われる、倍音(=元の音の整数倍、振動する音で、特に異性を強く惹き付ける力を持っています)が強めな久美さんの声。素質は十二分なのです。
 歌を、「場」を与えてさえくれれば、久美さんは素晴らしいものを聞かせ、見せることができる人です。それだけの表現力を持っているということは、久美さんの舞台をご覧になれば一目でお分かりになることでしょう。
 面白みに満ち溢れた演技、役の個性と感情を観ている人にしっかり伝えられる芝居は、歌においても既に活かされていますし、更に広く活かすことができる大きな可能性を秘めています。
 もっともっとお上手に。
 更なる高みを目指して頑張って下さいと、エールを贈ります。



〜VOLUME〜
(久美さんの声量)

 おおよそ20年もの長き間、舞台にお立ちになってきた久美さん。私ごときが、久美さんの声量について語ることはおこがましいことですが、不思議なくらいに圧倒的です。
 舞台の上から聞こえてくる久美さんのお声は、絶対に聞き逃すことがありません。聞き取れない、ということが、絶対にありません。今でこそ、前の方でばかり観ている私ですが、初めて観たFOXさんの舞台、「シグナルとブランコ」ではかなり後ろの方でした。しかし、私は久美さん演じる、化粧の濃い女の、色っぽい声、悪っぽい声、可愛らしく逃げていく声に、心の底から打ちのめされました。

 大きな声は耳障りでなく、小さな声は耳に神経を集中することなく、聞くことができます。怒鳴り声は心をすくませ、囁き声は心を撫でる。そんな感じでしょうか。声は大小に関わらず、鼓膜をしっかりと震わせ、心そのものに大小を伝えてくる。役の気持ち、久美さんが表現しようとしていることを、伝えてきます。
 この辺りは、さすが、声優さんとして沢山、経験を積んできた久美さんです。声は、舞台でお芝居する久美さんの中で、他の劇団員さんに誇れる大きな武器だと思います。単なる声の大小や声色のみに頼っていない。だからこそ、本当に心が震える。リアリティを感じ、感情移入できる。台詞から人間が伝わってくるからこそ、役のその後が気になってしまう。ちょっと危なげな台詞では、危うく想像までしてしまう。役の感情が確かに伝わってくるんです。

 久美さんのお声はどんなに大きくても、変に響く、といった感じではなく、どんなに小さくても、内にこもる、といったこともありません。
 これには、久美さんの豊かな表情も手伝っていると思います。表に出している気持ちや裏に隠している気持ち(気持ちとは裏腹の言葉)は、言うまでもなくそれは、表情と言葉があるからこそ伝わってきます。ではなくて、声の大小。これが久美さんの口の開け方と面持ちから、耳を疲れさせずに分かるんです。感じることができるのです。
 だからいつでも自然。無理が見えない、無理が聞こえない。舞台で台詞を言うには、当然のことですが、どんなに小さくても、大きな声が必要です。でなければ、客席の後ろまで、台詞が届かない。でも大声を出しているようには全く見えない。「やっぱりあなたが一番いいわ」において、特に小さな声の部分、普通に喋っている部分で、強くそのことを感じました。
 不思議です。この部分は、久美さんと実際にお会いしてお話している時の声の出し方と、何ら変わりが無いように見えるほどです。
 でも本当は違う。これもまた、久美さんの表情と演技の力なのでしょうか。

 さてここからは、私が観た(ビデオを含め)久美さんご出演のFOX公演、久美さんの名台詞です。私個人の感性で、ピックアップしてみました。

「アリス・イン・ワンダーランド」
 アリス・ドッジより
 『こんなの、こうやってこうやって』
 →殆ど出ずっぱりの、久美さん主演のアリス。可愛らしさと元気に溢れた魅力的な役です。数え切れないほどの魅力的な台詞に溢れています。また前述したように、美しい歌声も多数、披露しておられます。そこから選ぶのはさすがに至難の業ですが、敢えて一つ選ぶなら、この台詞でしょうか。行く先々で、自分が人間であることを示すために、手足を大きく振り上げながら言います。腰くだけになってしまうほど、これは可愛いです。思うに、沢山の劇団員さんを相手に、これだけの出番で主演を張るには、想像を絶するご苦労と努力があったことと思います。苦手な歌に対する困難もあったことでしょう。それを乗り越え、アリスという比類無き魅力を持った少女を表現した。後に何度も再演されたことが、久美さんの演技の素晴らしさとその成功を物語っています。

「踊子〜THE DANCE MURDER CASE〜」
南マリより
 喘ぎ声
 →ふざけているのではなくて、本当にこの部分が劇中、最も衝撃的・印象的でした。中島さん演じるポルノ映画監督の指示により、演技指導を受ける男優と女優。でも泥酔状態の監督の言うことなどまともにやっておれず、二人は……。黒瀬さん演じる男優・酒向にあるところを揉ませて、女優・南マリは喘ぎ声を上げます。詳しいことは秘密です(笑)。久美さんファンとしては、やはり最初はびっくりしました。でも単純に男として、!!!なシーンであったのも事実です。上記のアリスのような役(を意識して考えると、このような役まで魅力的に演じる久美さんは凄いです)から、ガイアのような神様のような存在まで演じる久美さんですが、色気とHっぽさは、決して外すことのできない、素敵な素敵な魅力です。

「インシデンタル・ギフト」
〜終わってしまった風景の夜に集いし者
                 汝らに幸あれ〜
姐さんより
 『こんな……ビルとビルの狭間に……ぽかーんとした空き地に立たされて……』
 →廃虚と化したビル。マリファナの売買の場にと、組員たちに案内された彼女。話が一通り済むと、不意に雨が上がります。煙草に火を付けてもらい、彼女は、ここは妙な場所だねえ、と呟きます。組織、しのぎ、上納金、跡目、etc、組の運営に追われ、政財界の汚い部分を知り尽くしている、ヤクザである自分たち。それがここにいると、どうでもよくなってくる、と、彼女は感傷的に漏らします。そこで、彼女がこの場所について言う台詞です。本当に、ぞくっとくる台詞です。画面を消して、声だけ聞くと良く分かるのですが、風景が物凄くリアルに浮かび上がります。この芝居の中で最も秀逸な、久美さんの上手な台詞回しであると思います。

「ギヤマンの仮面〜第一篇 俳優の仕事〜」
桂登米子より
 『いけねいけねいけね! そんなこと思ったらいけねんだ! ……わだしは、女優になるんだから!』
 →なまりを矯正してもらっている有馬先生に恋心を抱いてしまう桂。身体で恩返しをしようとする彼女。それを厳しく断り、彼女の思いをかわすように、有馬は歌遊びをするのですが、終わった後、桂は先生の顔を切なそうに見上げます。立ち去る有馬。そして桂は、女優になるという夢と恋心の狭間で、悩みます。そこで、独り桂が呟く台詞です。この一連のシーンの、久美さんの演技は素晴らしいです。桂の溢れる恋心が目に見えるほどに舞台を満たしていて、胸を震わせます。切ない気持ちが、彼女に感情移入させます。ここは名シーンです。

エナケン・シリーズ1
「スチャラカパイのギッチョンチョン」
スリのシン子より
 『挨拶ってのはねえ坊や。本当は新参者からするのが、礼儀なんだよ』
 →留置場に放り込まれた勝平さん演じるエナケンとの、出会いの台詞。私が知っている久美さんの中で、最も格好良い台詞です。自分が女だったとしても、惚れてしまうくらい! 「坊やたち!」なんて呼ばれてみたいです。

「ムラサキ先生の多忙な愛情」
伊藤けい子より
 『あの男の愛人です』
 →県の教育文化部のイベント、「古典芸能の夕べ」で脚本を書いてもらうため、上司を伴って彼女はムラサキ先生の自宅を訪れるのですが、山口勝平さん演じる上司の山西部長が去った後、けい子は大人しい性格ながらも真摯に、必死になって頼み込みます。この台詞は、上司を連れてきたことを、馬鹿なことをした、軽い気持ちで頼んでみたんです、と自嘲げに告げてから、鹿島ぼんさん演じるムラサキ先生に打ち明けるシーンです(正座の状態で、両手を太腿の上に重ね、ムラサキ先生の目を見て)。それまでは県の職員として直向きな態度で、それが表れた丁寧な声で話していたのですが、決意を込めた間を置いて、一人の女に戻った声で台詞を言っています。非常に見事でした。
 そしてこれと同等以上に見事な箇所がもう一つあります。この後、少し打ち解けたような雰囲気が続き、ではこれで失礼します、と笑顔で立ち去るのですが、その際、ムラサキ先生を切なげに見つめる数瞬の間があります。それが、作品だけでなくムラサキ先生のこと自身も好きなのだと告白させるところの、自然、且つ、しっかりとした伏線になっていて、また、愛人であることをいとも簡単に打ち明けたのは何故かというのを完全に納得させる、クッションにもなっていました。その辺りの演技も、とても素晴らしいものでした。
 次点として、四つん這いになってムラサキ先生に迫る、『あたし、ムラサキ先生のことを好きなんです!』という台詞も上げられます。ムラサキ先生の友人曰く、「ラブラブ光線」。そんな言葉が劇中に出てきますが、正にその「ラブラブ光線」を久美さんは全身から放っていました。観ているこちらさえクラクラするほどの恋心の放射。
 恋する女性の演技においては、やはり久美さんの右に出る者はいないと思います。久美さんの魅力が最大限に表れる局面と言っても、過言ではないでしょう。

エナケン・シリーズ3
「北北東に進路をとれ」
浜ちどりより
 『一目会ったその日から……私はあなたに、しつらくえん』(笑)
 →川鍋さん演じる奥野細道に一目惚れし、ワイングラス片手に夢見心地な調子で言う台詞です。抑揚と間が何とも言えず、最高です。この後のチャーリー浜の物真似も、迷(笑)台詞です。「ギヤマンの仮面」のある1シーンの演技を観て思いましたが、久美さん、吉本、好きですよね、きっと。

「踊子〜THE DANCE AT DEATH〜」
西ユキより
 『え? なに、監督、本編とんのー?』
 →中島さん演じるポルノ映画監督が本編を撮るという話を聞き、先ほどまで酔ってろうぜきを働いた監督に怒っていたユキですが、目の色を変えて興味津々に言う台詞です。はた目にはアダルトな雰囲気の、少し乱暴な言葉遣いのお姉さん(でも愛敬もある、好感を持てるお姉さん)ですが、女優として一生懸命、頑張っている姿勢を感じられる台詞です。この後、監督に甘えて猫撫で声を出すところも、とってもいいです。

エナケン・シリーズ5
「ここより永遠に最後の闘い」
クーニャンより
 『あいわなどぅたらっらんら、ら〜〜〜、ぷぷっぴでゅ、あ〜ん。よっしゃー!』
 →エナケン一座の劇中劇の中、三蔵法師を襲おうとする牛魔王が若い女(クーニャン)に化け、一行を色目でたぶらかすシーン。よっしゃーは太い声です(笑)。見た目にもお色気たっぷりで、可愛らしくも面白い台詞です。ノリノリな久美さんです。

「シグナルとブランコ」
化粧の濃い女より
 『いいわ・・・。見せてあげる。約束だもんねえ』
 →伊藤健太郎さん演じる若き日の倉田に、かどわかして芝居のチケットを買わせた化粧の濃い女。子供を産んだところを見せて あげる、という約束に食い下がる倉田に対して言う台詞です。Hっぽく優しげに……。こんなこと言われたら、追加でもっと買ってしまいそうです(笑)。因みに次点は「きっついお仕事よー・・・〜」です。

「やっぱりあなたが一番いいわ」
麗歌ありなより
 『あたしは、あたしそのものがこときっちゃんに愛されてると思いたい……』
 →全てを名台詞として上げたいこのお芝居の中で、一番を選ぶのは大変でした。一色刷りの原稿を探りに来た東大に、自分の琴吉に対する想いを語る、モノローグ的な台詞。ありなの恋心と不安が、この台詞に集約されていると思います。この前後のありなの長台詞と絶叫には、本当に心を打たれる、貫かれます。因みに次点は「たいが〜ちぇ〜んじっ!」でしょうか。

「2001ー」
久美子より
 『蝉だねぇ……』
 →たてかべ和也さん(客演)演じる藤木と出てきての、第一声。ほんの短い一言なのだけれど、おじいちゃんとの散歩を楽しんでいる様子、季節の移り変わりを感じている様子、色々な情感を感じました。久美さんの凄さを再認識させられる台詞です。

「F・f・ーエフー」
山西よし子より
 『そのまさかよ! 生まれてきた子も可哀相よ……!』
 →多摩川の土手近くで苦しんでいるところをホームレスの人に〜と、救急車で運ばれた経緯を、ベッドの上で話すよし子に、多摩川の土手近くで何をしていたのかとヨーコが問い、そして、まさか、と気付くシーンです。妊娠して、旦那に逃げられ、恐らく生活もままならないまま、お腹だけが大きくなっていき、やがて自殺を思い立ち……。この自棄っぱちに吐き捨てる台詞の鋭さに、どれだけ苦しんでいたか、その辛さのほど、何とか自殺は思い留まったものの、これからどうしたらいいのかという絶望的な気持ち、やるせなさ、自嘲的な気持ちなどが、いっぱいいっぱい詰まっていました。よし子は人の幸せを心から喜べる、非常に優しい女性で、か弱げでほんわかした雰囲気があります。この人柄は後半になってはっきりと分かりますが、それを知った上でもう一度、聞いたりすると、その痛々しさが思いの外、伝わってきて涙が出そうになります。

「アリス イン ワンダーランド」
〜Grade up Version! ぴーちくぱーちく かしましい〜
アリス・ドッジより
 『メラ!』
 →FOX史上、最大の観客動員数を記録した、50回記念公演……『久美さんのアリス』。この舞台を思い出す時……一番最初に頭に甦ってくる台詞であり、瞬間です。リデルの居場所について、飽くまでもしらばっくれる黒の女王に対し、「へ〜え、そうなの」と大人びた表情になるアリス。そして舞台中央へと進み出て、「なら、仕方無いわね」と、黒の女王を振り向く。アリスは、4の目でダムダム&ディーディーに教えてもらった「メラ」の呪文に、本当に効果があるものと、すっかり信じ込んでいたのでした。上にいる黒の女王に向かって(客席に背を向けた格好で)、「メラ!」と叫ぶアリス。声を身体ごと飛ばすように、上体を上下させながら叫ぶ様は、正に子供でした。久美さんとアリスの距離が限り無く密着していた、久美さんの演技。その象徴たる台詞でもあります。この笑いのための伏線、4の目で張られた伏線が消化された瞬間の、胸がすくような快感もさることながら……、2時間半、出演者の皆さんがそれぞれの目から目へ、バトンタッチしながら押し上げてきたアリスの魅力、それを遂に久美さんが受け止め、そして決めたような気がして、非常に思い出深い台詞です。

「森乃女学院千一夜物語 〜青い時代の娘たち〜」
月子より
 『環は……どう? 私たちと同じ生き方、できる?』
 →結婚を取るか歌を取るか悩む環に、月子は、自分や他の皆の生き方について、淡々と語ります。結婚は家と家とがするもの。言いなりになっている訳ではないけれど、それを受け入れている。疑問を感じる時もあるけれど、それでいいと思っている。そこで問い掛けるのでした。非常に心に染み渡っていき、そして重みを持って伸し掛かる台詞であったと思います。環に、自分のしたいことを決断させる、強烈な分水嶺。


 今でこそ、こうして誉めちぎることができる久美さんですが、デビュー当時は、声量が本当に足りなかったそうです。舞台の後ろにまで、ちゃんと声が届かない。
 それを克服するために久美さんがされたのは、V字バランスでした。V字バランスをしながら、声を一定時間、一定の音量で出す。久美さんは歌を歌ったそうです。その際、歌ったのは「もしもし亀よ」。
 私が久美さんを知ったのは、既に役者として大成された久美さんでしたが、やっぱり昔は幾度も壁に阻まれ、壁を乗り越える努力をされたのです。
 ご自分の声にコンプレックスを持ち、その辛さを、舞台に立ちたいという夢、それを叶えるための才能に何とか転化し、がむしゃらに頑張っていたデビュー当時。そういったことを知るたび、私自身の向上心にも火が付きます。

 久美さんの、舞台全体に響き渡る素晴らしい声量。そこから役のキャラクター、気持ちを、よりいっぱい感じるためにも、私自身、心を磨き、透明でありたいと思います。


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