久美さんinフリー
「ピーチくりんだパプ〜」久美さん的・感想レポート『クミコチック症候群』
 

☆遊々団ブランシャ★ヴェール 第4回公演☆
☆「ピーチくりんだ♥パプ〜♥」☆
☆久美さん的・感想レポート☆
☆『クミコチック症候群』☆


久美さんの舞台が終わって寂しくなって久美さんのことばかり妄想する病気。
それが『クミコチック症候群』(笑)。



 久美さんが座長と主演を張ったこの舞台。
 お話は正に、久美さんのために書かれたと言ってよいものでした。
 久美さん演じる『藤岡桃子』は27歳のピッチピチの派遣社員で、一目、見ただけで男性を虜にしてしまう、モテモテの女性。衣装は、ピンク色の花柄ワンピース(半袖)で、スカート丈は膝上で裾がくるっと内側に巻いた可愛らしいもの。その上に、背中を隠すように白い小さな薄手の上着を羽織り、胸の下で縛っていました。下は肌色のストッキングに、靴は白いヒール。髪は茶色で左右に二つに縛った、ボリュームのある感じ。銀色の小さなペンダントを首に提げていました。
 電車の中でお互いに一目惚れした男性、松本勝さん演じる『幸成さん』が彼女の派遣先の上司としてやって来るところから物語は始まります。付き合うことになった瞬間、首にアクセサリーが嵌められ、マイクを渡され、赤いスカートを巻かれる『桃子』(笑)。激烈に乙女チックな歌が始まります。最前列の一部のお客さんには、歌いながら握手と目線のサービス(千秋楽では最前列の殆どのお客さんと握手していました)。こうして全編、話の進行や説明に歌と踊りがふんだんに使われる訳ですが、久美さんの歌と踊りは、10年に渡って、サクラの歌謡ショウで鍛えられただけはあるもの。艶がありつつも可愛い歌声は心が潤うかのよう。そして特にずば抜けて巧くなった踊りは見堪え十分。目が離せませんでした。
 伊倉一恵さん演じるお局様からの冷たい仕打ちを受けつつも、デートを重ね、愛を深めていく二人。そんなところへ、『桃子』と別れてしまってから女心を知るためオカマになってしまった(笑)元カレの『誠一』(レオさん演じる)がヨリを戻そうと現れたり、『桃子』が大ファンであるアイドルの“タッキー”(ユウ・アマノさん演じる)が実は昔、隣近所に住んでいた男の子で、彼女に本気で惚れていたと迫ってきたりと、さあ大変。やがて四角関係になってしまうのでした。
 まるで恋愛ドラマのヒロインのごとく、『桃子』に都合の良いように話は進んでいくのでした。それが前半部分。ところがところが、この舞台の語り部的存在である、しおつかこうへいさん演じる病院の『井川先生』が種を明かします。因みにしおつかこうへいさんは前説も担当され、絶妙な語り口調で毎回毎回、楽しませてくれました。

 実は彼女は、“ドラマチック症候群”と言う病気に掛かっていたのでした。それは、普通の会話が何もかも、自分の都合の良いように聞こえ、まるで恋愛ドラマの主人公になったかの如く、妄想を繰り広げていいくと言う、現実の世界を拒絶してしまうと言う病気。『桃子』は本当は72歳のおばあちゃんだったのです。
 この“ドラマチック症候群”と言うものの説明役として登場するのが田中真弓さん演じる『さゆりちゃん』。『井川先生』がポケットマネーで雇ったと言う設定です(笑)。派手な衣装で、この舞台のテーマソングとなっている“ドラマチック症候群”の歌を唄い、客席いじりなどもしつつ、病気について愉快に(?)説明していました。この真弓さんの客席いじりは日に日に激しくなっていきました(笑)。
 そして後半部分は、彼女に真実の姿を思い起こさせるべく、本当はこんなやり取りが繰り広げられていたと言う形で舞台は進行していきます。久美さんは若い『桃子』の姿のまま、同じ芝居をし、他のキャストの皆さんは彼女の目に映っていた姿とは別の姿で登場します。『幸成さん』は老人ホーム“遊々館”の事務長で強烈なマザコン、『桃子』を亡くしてしまった母親に重ね、自分のママになってと老人ホームへの入居を勧めてきます。そして元カレの『誠一』は実は彼女の旦那さんである野菜博士。“タッキー”はと言うと、老人ホームのカラオケ大会に招かれた歌手であることを利用して窃盗に押し入った『山本たかし』と言う家族のいない孤独な青年。四角関係に発展していくはずのドラマは、実は彼女が窃盗犯に間違われて事件に巻き込まれてしまう物語だったのです。

 そんな前後半に分かれたお芝居で、前半は可愛い久美さんを目一杯、堪能しつつ、後半はそんな久美さんとキャストが展開するチグハグなやり取りが最高に面白いコメディと化す、見事に良く出来た舞台でした。
 久美さんのありとあらゆる一挙手一投足は、もう死ぬほど可愛かったです。表情の変化、仕草の一つ一つが練り込まれているようで、観ていて正に萌える、完成度の高い芝居をしていました。
 中でも、元カレが現れて『幸成さん』の陰に隠れて小さくなる姿や、彼との関係に疑問を感じて落ち込んでいる最中、友人たちに『幸成さん』に渡された仕事の書類(実は婚姻届)を見てと言って、口を尖らせたり、しゃがみ込んでいじけている姿や、派遣先のOLたちに自分が『幸成さん』の恋人であることをバラして、とてとて駆けて「あん」と書類で顔を隠す姿が、猛烈に可愛かったです。
 また、“タッキー”と海辺で繰り広げる、年下青年と恥ずかしいくらいのベタ甘な会話も蕩けるほどに可愛かったですが、これが後半になると一転。窃盗犯である『たかしくん』が「殺すぞ」と脅しているのに彼女は暢気に「喜んで♪」と返す、大爆笑のコメディに激変。何度、観ても笑ってしまう、最高の場面となっていました。
 一方、後半の導入部、『井川先生』が真実を『桃子』に突き付けようとするシーンでの、娘姉妹に羽交い絞めにされて暴れる彼女。これなどは、面白味たっぷりな久美さんのコミカルな演技が観られる、隠れた見所の一つだったのではないでしょうか。
 前半と後半、キャストの演じ分けは本当に素晴らしかったです。特に松本勝さん演じる『幸成さん』は、演じ手も別人かと思うくらいの豹変ぶり。また、『桃子』の娘姉妹を演じるたあこさんと平桜嵐子さんなどは、キャラが殆ど変わらず、これもまたこんがらがりそうで難しかったんじゃないかと思われます。
 久美さんは基本的に同じ芝居を繰り返していますが、同じ気持ちを込めつつも、勿論、相手の台詞とタイミングは違う訳で、それに合わせて面白く見えるように演じなければならない。そして周りの皆さんは、丸っきり違う姿になったり、殆どキャラが同じ姿であったりと、演じ分けつつ、トンチンカンな反応を返してくる久美さんと合わせないといけない。非常に難しい芸当かと思うのですが、これが実に上手く行っていて、最高のコメディになっていました。

 そしてラストは、『桃子』は病院のベッドの上。銀色のかつらを被り、ショールを肩に羽織り、老眼鏡を掛けた姿。病気だったとは言え、皆に迷惑を掛けてしまった自己嫌悪に陥ります。更には妄想の中とは言え浮気をしてしまった自分、旦那さんに離婚されてしまうと思い込み、泣き崩れてしまうのでした。久美さんのおばあちゃんの演技は、無理に老いた姿を作っていない、『桃子』の今の気持ちを大切にした演技だったのではないかと思います。そのお陰で、彼女の姿にとても感情移入してしましました。胸にぐっと来る、素晴らしいものでした。
 パンフレットのキャスト紹介のところは、「あなたがキュンとするシチュエーションは?」と言うアンケート形式になっていましたが、正にこの問いにぴったりなシーンはここではないでしょうか。
 泣いている『桃子』の前に、花束を持ってレオさん演じる、優しい旦那さん『誠一』が登場。プロポーズのことを詠った優しい愛の歌を唄い、彼女に花束を渡します。そこから出てきたのはピンク色の大根。それは『桃子』が出した結婚の条件。ピンク色の大根を作って。それを覚えていてくれたことに、歓喜の笑顔を見せる『桃子』。「覚えていてくれたの」と言う久美さんの、とてもとても幸せそうな満面の笑顔が、至高の宝物と言えるくらい本当に素敵でした。君の病気なんてどうでもいいんだ、君の心が誰かに奪われたら、また取り戻せばいい。旦那さんの台詞が非常に優しくて格好良くて、共感を覚えるものでした。キュンとなる、素敵な素敵なシーンでした。
 野菜研究に没頭してしまい、自分に構ってくれなくなった旦那さん。娘たちも家を出てしまい、寂しくなってテレビを、ドラマばかり見るようになってしまった『桃子』は“ドラマチック症候群”に掛かってしまった訳ですが、恋の妄想にひた走る彼女の姿は、いじましくて、可愛らしくて、切なくて、何とも言えないものがあります。後半、笑えて面白いと同時に、胸に切ないものを覚えてしまう。『たかしくん』の背中を押しながら山を登りつつも、頭の中では嬉しさ半分困り半分で“タッキー”に海へと連れて行かれているんだなと思うと、これもキュンと来るものがあります。それと同じ意味で、『幸成さん』と甘い時間を過ごしているつもりで、湯呑みを掲げて乾杯を待つ姿も。
 いつまでも若くありたい、いつまでもキュンとしていたい、恋愛と言うものが大好きな久美さんに、この舞台は本当にピッタリだったのではないかと思います。本当に良く出来た、面白い、そしてラストはハートフルな、素晴らしいお芝居でした。そして久美さんファン的には、ピッチピチの『桃子』と別の角度から見たピッチピチの『桃子』、それからラストのおばあちゃんの『桃子』と、一粒で二度、三度と美味しい舞台。

 因みに千秋楽は、予想通り、遊びがふんだんに取り入れられていて、レオさんとユウ・アマノさんの対決(前半部分の、元カレと“タッキー”の対峙)がユウ・アマノさんの奇跡のカミで爆笑ものとなっていたり、真弓さんはやりたい放題(笑)。『幸成さん』が花を『桃子』に贈る時に言う花言葉が「アイリス」になっていたり。
 アンコールのカーテンコールでは、久美さんがキャストやスタッフに感謝を捧げると同時に、キャストの家族にもと言うと、そこで出演者から苦笑が。すると久美さん、「だって本当にそう思うんだもん」と。こうした挨拶は得手ではない久美さんですが、久美さんの優しい人柄が滲み出た言葉でした。


     << Prev     Next >>