サクラ大戦新春歌謡ショウ
神埼すみれ引退記念公演
◎◎◎すみれさんを想いつつの◎◎◎
◎◎◎久美さん的レポート◎◎◎
(落日を除いて)





 レポートと銘打っていますが、久美さん演じるアイリス中心の、殆ど感想文です。
 筆を飛ばしている部分も多々あり、公演をご覧になられなかった方のお役には立たないかもしれませんが、このレポートにより、4月発売予定のDVDがより楽しみになれば幸いです。


 すみれさんが引退する。富沢美智恵さんが「サクラ」の世界を去る。私がこのニュースを知ったのはインターネットででした。知ったその時はまだ全然、実感が涌きませんでした。驚きはしたけれど、事実のみが記憶にインプットされた。そんな感じでした。
 サクラ大戦のファンクラブ「太正浪漫倶楽部」の会報が手元に届いて、その中に、何の前振りも説明も無しに、新春歌謡ショウのチケット先行予約のことが書いてありました。神埼すみれ引退記念公演「春恋紫花夢惜別」。それを見た時、漸く実感しました。ああ、本当にいなくなるんだ、って。何もかもが、すみれさんがいなくなる方向へと動いている。先行予約に関する無機的な説明を眺めるうち、美智恵さんが去ってしまうという事実が胸に刃を突き付けてきました。心中、穏やかではいられなくなりました……。単純に悲しいという気持ち、それに、他の花組の皆さんの悲しみを想ってやるせない気持ちになりました。


 ショウは昨年同様、一部と二部に分かれていました。一部はお芝居、二部は歌。
 オープニングは何と「ゲキテイ!」でした。拍子木の音と共に、一番前にある固い幕が上がっていって、薄い紫色をした布地の幕がばさあっと、下に落ちます。すると舞台の上には、戦闘服姿の花組の姿が! 鳥肌の瞬間でした。第1回の歌謡ショウ「愛ゆえに」を思い出し、胸が熱くなりました。
 アイリスの戦闘服はだいだい色で、帯は腰の後ろで大きなリボンの形にまとめられている、可愛らしいもの。「つばさ」以降、もう二度と生で観られないだろうと思っていただけに、懐かしさもひとしおでした。
 花組みんなにとって始まりの歌。美智恵さんや久美さんを繋ぐ始まりの歌で、新春歌謡ショウの幕は開きました。

 一部のお芝居は、歌舞伎俳優(女形)の市川春猿さんと、「サクラ」のドラマCDに幾度か出演されたことのある千葉繁さんがゲストで登場していました。
 春猿さんは、千代春という名の芸者さんの役。千葉さんは、浪人の頭役です。
 特に千代春役の春猿さんは見事でした。女形の人を生で観るのは初めてでしたが、本当に別世界の人って感じでした。とにかく美しいです、動作の一つ一つが。どこを切り取っても、どの瞬間を写真に取っても、間違い無く絵になるような。何回、足を運んでも、自然と目を奪われてしまいました。さくらにせがまれて、舞いを披露するシーンがあるのですが、もう溜め息ものです。はまる人がいるのも分かる気がします。世界に誇れる訳だなと実感しました。

 工藤男爵の家宝の宝剣、村雨の短剣がくらやみ小僧に盗まれた。それを追う浪人たち。が、千葉(他の浪人と区別するため、こう呼びます)は早々に諦めます。と、通りの向こうから、柳橋の芸者、千代春がやって来ます。千葉は以前、彼女に袖にされたことがあるため、意趣返しをしようとします。しかしただの芸者とは思えぬ身のこなしで、千代春は浪人たちを切り切り舞いさせます。更にそこに、通り掛かったすみれとマリアとさくらが助太刀。結局、すみれが一人で引き受け、浪人たちをやっつけてしまいます。そのお礼に千代春は、料亭「亀吉楼」で花組に一席、設けてくれます。
 元はすみれの、鴨鍋を食べに行きましょうという誘いで街に出ていた他のメンバーも、「亀吉楼」に集まってきます。途中、カンナがへそを曲げてどこかへ行ってしまったり、泥酔した大神と金田先生が乱入したりもしました。やがて、千代春が帯に差している短剣に、すみれが気付きます。柄の意匠から、それが村雨の短剣であることを見抜き、千代春がくらやみ小僧なのではないかと疑います。全てを告白する千代春。短剣は父の形見で、盗まれてしまったもの。今は工藤男爵の家にあると知り、芸者になって裏の事情に探りを入れながら、そして取り返した。しかし、さくらが必死になって千代春をかばいます。盗んだものをいつまでも柄や鞘を変えずに持ち歩いているはずが無い。千代春に言い聞かせるように、さくらは言います、大事なのは刀の部分ですから、と。そこで、すみれは顔をほころばせ、笑います。全て冗談として笑い飛ばし、やっと人の情が分かってきたとさくらを誉めます。と、そこへ浪人たちが仕返しに乗り込んできます。でもやっぱりやられて帰っていきます(笑)。さくらの花びらがひらひらと舞い落ち、「こいつは春から縁起がいいや」と千代春が締めて、一部のお芝居は終了。
 大まかな粗筋はそんな感じです。


 歌謡ショウが切っ掛けで、久美さんを好きになったのだけれど、第1回から見ている分、どうしたってすみれさんには思い入れはあります。出てくるだけで、何かしてくれるんじゃないかと、いつも期待させてくれる人でした。
 今も印象に残っている、好きなシーンがあります。「つばさ」です(初っ端から飛ばしていたすみれさんでしたが・笑)。アイリスが本番前、がたがた震えながら緊張している時。自分の出番が済んでカンナと一緒になって舞台裏に来るのですが、「カンナさん! ちょっとあなたアドリブ多過ぎるんじゃありませんこと」って言うところ。で、その後、緊張が解けたアイリスに優しく笑い掛けるところです。あの時は、ほろっとさせられました。ああ、優しいんだ、ってあったかい気持ちになりました。面白くて優しいすみれさん(こう書くと何だかすみれさんではないみたいですが)というのが、私の中の歌謡ショウのすみれさんでした。
 「がきんちょ」とか言いつつ、アイリスには優しいすみれさんが好きでした。


 それではアイリスの見所をかいつまんで書いてみます。
 目立った出番はそれほどではありませんでしたが、随所で、完成した子供らしさと可愛らしさが更に一歩、進んで発揮されていました。
 久美さんは可愛いだけではないんです、と、<宣伝美術さん>のコーナーに書きましたが、やっぱり可愛い時は可愛いです。本当、凄いなあと思える可愛らしさです。
 今回、アイリスは冬らしく(と言っても、着ているのは黄色い半袖ワンピース。夏服なのですが)黄色いマフラーを巻いて、黄色い手袋を履いていました。

1[可愛さ度:☆☆☆☆]
 すみれに鴨鍋を食べに行こうと誘われて出かける途中のシーンが、アイリスの初登場シーンです。紅蘭とレニと一緒に出てきます。発明のことでアイリスに半眼で見られた紅蘭はやおら、右手を掲げ、「レ・ミゼラブル!」と叫びます。すると真似するアイリス。不格好な感じの立ち方で、同じように右手を掲げ、「レ・ミゼラブル!?」と叫び、いぶかしげに紅蘭に顔を向けます。

2[可愛さ度:☆☆☆☆☆]
 例によって解説するレニ。ああ、無情(邦題)→情け無いと言いたかった紅蘭なのでした。「分かりやすいやろ」と言う紅蘭に、「分かんないよ」と困ったように言うアイリス。しかし紅蘭も譲りません。「分かりやすいやろ」とちょっとむっとしたように繰り返します。「分かんないよ」やっぱりアイリス。紅蘭VSアイリス。「分かりやすい!」「分かんない!」と二回ほど繰り返してしまうのでした。よくある子供の喧嘩みたいに、アイリスは大きく足を開いて、その場に踏ん張るように立ち、顔を突き出しながら紅蘭と言い合っていました。

3[可愛さ度:☆☆☆]
 紅蘭が新発明の全自動拍手くんを取り出した時、レニと一緒に「ぜんじどうはくしゅくん……」と小さく呟くところも可愛かったです。

4[可愛さ度:☆☆☆☆]
 すみれたちが千代春に招待された「亀吉楼」に、三人でやって来るシーンです。全自動拍手くんが何故か爆発して(笑・本当に何故だか訳分からないです)嘆いている紅蘭の背中を、アイリスはジャンポールでぽんぽんと叩いて慰めたりしています。「亀吉楼」の入り口を見つけ、アイリスは一番に入っていきます。「わあ、凄いよ、ここ……」と感嘆し、千代春の姿に目を釘付けにされます。彼女の美しさに呆然とする三人なのでした。振り返り、「綺麗……」と呟くアイリス。かえでさんにお上がりなさいと促され、「はーい」と元気良く手を上げて、靴を脱ぎ、座敷に上がります。紅蘭と一緒にかえでさんの隣に座ります。マフラーをかえでさんに取ってもらっていました。

5[可愛さ度:☆☆☆☆☆]
 すみれの余計な一言でどこかへ行ってしまったカンナを探しに、マリアとすみれが出ていきます。その空いた席には、美味しそうな料理が既に出ています。アイリスと紅蘭は小声でそっちへ行こうかみたいな感じで話して、立ち上がります。「ねえねえねえ、これ食べていい?」とアイリスは千代春に尋ねます。新しいのを持ってこようとする千代春でしたが、アイリスは「いいよー。勿体無いもん」と言って席に着きます。早速、食べるアイリス。卵焼きみたいなものを箸に取り、口に運びます。「おいしい……!」と感激するアイリス。因みに初日では、半分こぼしていました(笑)。千代春に、将来は立派なレディになるわね、と誉められ、嬉しげに「うん!」と頷くアイリスでした。

6[可愛さ度:☆☆☆☆☆]
 箸に何か差しつつ、アイリスはすみれに「どうしてすみれはカンナと喧嘩ばかりするの?」と尋ねます。尋ねてから箸を口に運びます。すみれはカンナが自分のようなトップスターに憧れて嫉妬しているなどと言い出します。その、トッ…………プスタア(笑)のところで、アイリスを含め皆、座ったまま右手を上げて真似していました。

7[可愛さ度:☆☆☆☆☆☆☆]
 すみれが鴨鍋をご馳走してくれるという話を聞き付けた武田がやって来ます。すみれをおだてて自分もあやかろうという腹でしたが、鴨鍋の姿は無くうろたえる武田。紅蘭に図星を突かれる武田でしたが、取りつくろおうとします。しかし、持ってきた長葱をアイリスが指摘しちゃいます。「ネギはー?」今回の歌謡ショウで最も可愛いポイントでした。すっごく可愛い言い方でした。

8[可愛さ度:☆☆☆☆☆☆☆]
 マリアとさくらに連れられて、カンナが戻ってきます。その間、アイリスはすみれや紅蘭、かえでさんたちと料理を楽しんでいました(メインとなっているのはカンナたち)。すみれにお酒を勧めようとしたり、ジュース(サイダーみたいなもの?)をお酌し合ったあり、かえでさんに、あ〜んと何か食べさせてもらったりもしていました。

9[可愛さ度:☆☆☆☆☆☆]
 そして第一部最大のアイリスの見せ場です。戻ってきたカンナとジャグリングをするのです。それぞれ三つの輪っかをお手玉みたいに投げて、一、二の三で、輪を一個、交換し合います。二、二の三、三、二の三、という具合で、五回まで出来れば成功です。成功率は半々というところでした。失敗した時のアイリスの台詞も面白かったです。「落とすところでしたー!」とか「身長差があるとやっぱり難しいや」とか「おとそを飲みすぎてしまいました」など。失敗したらそれはそれでおいしいのだけれども、成功した時がやっぱり一番、嬉しかったです。その後、武田がアクロバティックな芸を披露するのですが、待つ間、縁側に腰掛けて足をばたばたさせる様も、可愛かったです。徹頭徹尾、子供らしく、可愛らしく。さすが久美さんです。

10[可愛さ度:☆☆☆☆☆☆]
 突然、虎の被り物が乱入してきて、「亀吉楼」は大騒ぎになります。マリアが銃を出しますが、アイリスが「マリア、撃っちゃ駄目ー!」と制止します。今年も駄目?と聞かれ、「駄目」と低い声で答えるアイリス。その後、「お手」と言って、虎にお手をさせちゃうアイリスでした。中に入っていたのは、すっかり酔っ払ってしまった大神と金田先生。アイリスは大神を片方の腕を肩に担いで(実際は不可能なことですが・笑)、皆と一緒に奥の方へと連れていきました。

11[可愛さ度:☆☆☆☆☆]
 仕返しに来た浪人たちがすみれたちと戦っている最中、大神たちを寝かせてきたアイリスたちが戻ってきます。レニ、紅蘭、かえでさんらと一緒に席に着いて、呑気にすみれたちの戦いぶりを見物しちゃいます。今まで様々な困難を一緒に乗り越えてきたことにより培われた信頼と、歌謡ショウで喧嘩してきた極道たちと違い、浪人というちんぴら不勢が相手だから、という余裕の為せる業でしょうか。おいもだー、というレニの言葉に、器の蓋を取って感激したり、かずのこよ、というかえでさんの言葉に、「えー!」とか言って喜んでいます。回されてきたかずのこを、手で摘んで食べるところがとびきり可愛かったです。

12[可愛さ度:☆☆☆☆☆☆]
 戦いが終わり、いつ間にやら仲直りしているすみれとカンナ。はらぺこちん、などと卑猥に(笑)ふざけるカンナに、アイリスは天を仰いで「もう〜! カンナったら〜」と、皆と一緒に笑い合います。さくらの花びらが舞い落ち、皆、しみじみとします。「舞台、いっぱいやりたいね」とアイリス。千代春さんが、こいつは春から縁起がいいや、と締めて皆で決めポーズ。アイリスはレニの横で、スカートの裾を可愛らしく持ち上げていました。


 すみれさんの歌で私が好きなベスト5です。
<<<新春歌謡ショウ前>>>
1.雲雀の歌
2.愛はダイヤ
3.センタースポット
4.なやましマンボ
5.愛は永久に

<<<新春歌謡ショウ後>>>
1.すみれチャチャチャ
2.センタースポット
3.愛はダイヤ
4.なやましマンボ
5.愛は永久に

 ショウ後の上位2曲は、すみれさんの別れの曲だったのですが、見事にあてられてしまいました。そう、二部はすみれさんの曲のヒットメドレーだったのです。
 すみれさんが関わった全ての曲を花組皆で歌い、後半はすみれさんも交えて歌いました。正しく走馬灯のように、過去の歌謡ショウの情景の1シーンが、曲と共に浮かんでは消え、浮かんでは消えていきました。そして昔のものになればなるほど、胸が躍る感覚がありました。
 いつの間にか、久美さん目当てに歌謡ショウに足を運んでいたことに気付きました。そう、以前はもっと「サクラ」自体が大好きだったんです。聴いているうちに、そんな気持ちが甦ってきました。すみれさんに限らず、さくらもマリアも皆それぞれに好きだった、そんな姿勢。FOXさんは久美さんが好きだから観に行って、観に行くうちちょっとずつだけれど他の劇団員さんにも目を向け、好きになっていっています。「サクラ」ではそれとは逆に狭めていってしまっていたみたいです。
 すみれさんの曲で、懐かしい気持ちが甦ってきました。


 二部は歌。すみれさんのヒットメドレーでした。
 二部のオープニングは「君偲ぶ歌」。さくら、すみれ、アイリスの順に出てきて、切々と歌い上げていました。左手を頬に当てて、切なそうに首を回す振りが印象的でした。
 ヒットメドレー・PART1は以下の順で、すみれさんが関わった曲をすみれさんを除くメンバーで歌いました(記憶が不確かな部分があり、組み合わせが間違っているかもしれません。どうぞご容赦下さい)。
 ご存知のように、青山劇場は舞台装置が凄いので、足場がせり上がっていったり、はたまたその逆だったり、階段が出来上がったりと、曲によって目まぐるしく変わっていました。

・キネマ行進曲〜紅蘭、マリア

・雲雀の歌〜カンナ&アイリス
 舞台中空ほどの高さの段の上、まず向かって左手にカンナが登場して、マリアのパートを歌いました。
 で、右手にアイリスが登場。すみれのパート「夜が恐いから〜」を歌いました。「いーつも」と「あーいの」のところで、両手を組み合わせた格好で顔を横に振りながら、腰を上げ下げして、わざと大げさに抑揚を表現していました(笑)。更に「あなたに届けとー」の最後では顔を横にぶんぶか振りながら歌っていました(笑)。
 サビが近づくと同時に中央に足場がせり上がってきて、アイリスとカンナは中央に移動。サビを歌います。メドレーでショートバージョンなので、そのまま最後の二行を一気に歌います。ラスト、カンナは一輪のバラをアイリスに差し出すのですが、アイリスが受け取ろうとすると、カンナは花を食べてしまうのでした。あ、と口を開けるアイリス。そして舞台右側へとはけていきます。
 因みにラストは途中から変わりました。サッカーボールぐらいの大きさの綺麗な花の意匠に、何本も帯が付いたのをカンナが持っていて、アイリスはそれを受け取るのですが、帯の先をカンナが持っているので取ることができない。一生懸命、持っていこうとするアイリス。と、手を離すと、伸縮性のある帯なため、勢い付いて花はカンナの手に当たってしまうのでした。口に手を当てるアイリス。そして舞台右手へ。という具合でした。

・夜の海月〜マリア、紅蘭、大神
・ドリーム〜さくら、レニ、カンナ
・キネマ行進曲〜???
・この世は楽し〜紅蘭、親方
・私のお気に入り〜マリア、さくら、レニ
・マスカレイド〜かえでさん

・スキャンダルはダメよ〜アイリス
 舞台左手から、すみれが歌っているソロの部分を歌いながら右手に向かって歩いていきます。ジャンポールを掲げながらゆっくりと、愉しげな笑顔を浮かべながら。舞台中央、「素晴らしいスキャンダル」の「スキャンダール」のところで、可愛らしくるりと回り、「素晴らしい宣伝」の「宣伝っ」のところで、片足をぴょこんと上げて、舞台左手へと走り去っていきました。

・花暦〜レニ、武田
・幸せな夢〜さくら
・キネマ行進曲〜全員(すみれ以外)

 PART1はここまで、続いてすみれも交えてPART2が始まります。
 歌に入る前に花組メンバーが一人ずつ、今の胸中を一言しゃべるのですが、アイリスの台詞はこうでした。
「アイリス泣いちゃうかもー! でも頑張る!」

・花咲く乙女
・激・帝国華撃団(改)
・夢見ていよう
・花組レビュウ
・新しい未来へ
・奇跡の鐘
・ユーロ恋の発車オーライ!
・これがレビュウ!
 すみれを中心に据えた格好で、ここまで全員で歌います。アイリスも時にしっとりと、時に元気いっぱいに歌い踊っていました。
・愛は永久に
・愛はダイヤ
 〜すみれ&カンナで
・絶対運命のタンゴ
・なやましマンボ
 〜すみれ一人で(&ダンサーズ)

・夢のつづき
 ラストナンバー。舞台が薄暗くなります。花組メンバー(レビュウ衣装)が一人ずつ順に出てきて、アカペラで各パートを静かに切々と歌っていきます。歌い終わるとその場に立ち止まり、次の人が出てくるという形です。すみれとの日々を思い出すかのように、すみれとの別れを噛み締めるかのように、それぞれいろんな思いをすみれに届けるかのように……。静かに、けれど熱く歌い上げていました。美しく、感動的なシーンでした。アイリスは二番目に出てきて三節目の詞「この夢がずっとずっと つづいてほしい わたしの恋は 輝いているわ」を歌いました。最後、階段の上よりすみれが登場します。「皆さん、ありがとう」と言います。すると音楽が入り、最後は盛大に皆で歌い、幕が閉じます。


 この歌謡ショウで初めて、私はすみれさんの名前を声に出して叫びました。確か5日目の昼が最初だったように思います。今だかつて私は、歌謡ショウでアイリス以外の名前を口にしたことはありませんでした。何のためらいも無く、気が付くと、自然と口を突いて出ていました。「すみれー!」って。
 ラストのカーテンコール、静まり返った中、花組がそれぞれすみれの名前を呼んで、階段の上からすみれが出てくるところがあるのですが、5日夜、私は花組が呼んだ後、自分もすみれの名を呼びました。すると、後から続いてくれる人がいっぱい出てきました。個人的な話なのだけれど、こういうのって初めてだったので嬉しかったし、何より、すみれさんに何か出来たみたいで嬉しかったのでした。
 今回、私は黄色い帽子(久美さんのサイン付き☆)を被せたジャンポールを持って応援していたのですが、一度、カーテンコールの後に、アイリスが「あ」って感じでそれに気付いて、手を振ってくれたことがありましたが……、ことによるとそれよりも嬉しいぐらいのことでした。


 フィナーレは花組からすみれに捧げる、すみれ送り太鼓でした。そう、三度目になる和太鼓です。
 今回は舞台から見て、Vの字を逆さまにした立ち位置で、太鼓は縦置き、アイリスは右側の最前にいました。一番奥には親方と大神がいて、大神は一番大きな太鼓を叩いていました。
 いつもの和太鼓と違い、すみれさんに捧げる太鼓……。いつもの迫力に加え、今回は凄まじいまでの気迫がこもっていました。掛け声も強くはっきりと何度も入っていて、アイリスの気勢も何度と無くしっかりと聞こえました。
 太鼓の中身で目新しく見えたのは、叩きながら振り上げた片方の腕で、8の字(を崩した形)を描くところでしょうか。  ソロの部分では、足が舞台から飛び上がりそうになるまでの勢いで、アイリスはばちを振るっていました。
 終盤近くになるに連れ、掛け声も太鼓の音も激しくなり、正に怒涛の勢いでした。圧倒されました。
 すみれを送るに相応しい、華々しくも力強い、そんな和太鼓でした。

 太鼓が終わると、すみれの新曲にして、引退の曲、「すみれチャチャチャ」を、すみれが歌いました。
 「すみれチャチャチャ」
 目頭が熱くなるほど、物凄く素敵な曲です。可愛らしく、少し切なくもあり、そして何より温もりが感じられる曲です。本当に、いい曲です。こんな素敵な曲なのに、何でやめちゃうのか……。7回、観に行った間、毎回そう思いました。それぐらい、素晴らしい曲です。
 「すみれ、チャチャチャ」というサビの部分があるのですが、「チャチャチャ」とお客さん全員で合唱したのも、とっても素敵で印象的でした。
 曲が終わると、すみれは舞台下へと沈んでいき、「すみれチャチャチャ」が歌の部分抜きで、リフレインされます。ダンサーズが曲に合わせて踊っていて、五日目からは、有志の方々がサビの部分を客席で合唱するようになりました(千秋楽には全体に広まったようでした)。
 そして一本のマイクを前にして、すみれは最後の挨拶をし、「センタースポット」を熱唱します。間奏ではマイクから離れ、客席に向かって、「ありがとうございました」と口の形だけで告げ、とびきり素晴らしい笑顔で頭を下げていました。右、左、中央の順に。余りに優しげな美智恵さんの顔に、私は何度も胸が詰まりそうになりました……。
 「センタースポット」が終わると、すみれは深々と頭を下げ、そして背を向け、舞台奥へと消えていきます。残されたのは一本のマイク。左右から静かに幕が閉じていきます……。


 私なんかでさえ悲しいのだから、すみれさんファンの悲しさは相当なものだろうと思います。
 これがアイリスで、久美さんだったら、今みたいにレポートなんて書けないだろうと思います。胸に大きな穴が開いて、何もする気力も起きないだろうと思います。ことあるごとに泣きながら、毎日を過ごしているかもしれません……。
 いつまでも久美さんの舞台を見ていたいし、久美さんの声のお仕事を耳にしていたいです。久美さんがこの世界から去る日なんて、想像しただけで身を切られるように辛いです。悲しくなります。でも、こんなことにばかり胸を割いても久美さんのためにはならないので、「海神別荘」のレポートの末尾にも書いたように、これからも頑張る姿勢を見せている久美さんを信じて、精一杯、応援していこうと思います。
 美智恵さんの分も頑張る久美さんを信じて。


 カーテンコール(カーテンコールの後はいつものように「ゲキテイ」、そして「全国の大神中尉に……」でした)では、出演者の皆さんがそれぞれ挨拶していき、最後、花組のメンバー各々がすみれの名を呼びました。階段の上からゆっくりと現れるすみれ。前に出てきて、「ありがとうございました」と客席に向かって口の形で伝え、深々と頭を下げました。
 そして美智恵さんは、春猿さんと千葉さんに付き添われて去っていきます。
 その後、花組メンバーが一言ずつ、すみれにメッセージを贈りました。
 アイリスからのメッセージはこちらです。
「すみれ。何でやめちゃうの? 何で? アイリス、もっといっぱいいろんなこと教わりたかった……」
 悲しい気持ちが溢れています。
 初日では久美さん、涙ぐんでいましたし、千秋楽ではぼろぼろ泣いていたといいます。久美さんが泣いてしまったのを切っ掛けに、会場で多くの人が泣き出してしまったと聞きます……。
 久美さんの美智恵さんへの思いは、パンフレットにして既に溢れていますが、本当に、久美さんは美智恵さんのことが大好きで、尊敬していたのですね。
 そんな、久美さんの温かい気持ちに共感しながら……今回のレポートはこの辺りで筆を置こうと思います。
 お疲れ様でした、久美さん。
 そして……
 今までありがとうございました、美智恵さん。
 5年間、本当に本当に本当にご苦労様でした。


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