<久美子 イン ワンダーランド>

久美さんの代表作の一つであり、
2002年5月28日〜6月2日、
50回記念公演として
打たれたお芝居、
「アリス イン ワンダーランド」
についてのコーナーです。





再演時の「アリス〜」を振り返ってみましょう……


○●○「アリス・イン・ワンダーランド」とは○●○

 劇団21世紀FOXさんの代表作にして、久美さんの代表作の一つです。
 タイトルからも分かる通り、ルイス・キャロル原作の「不思議の国のアリス」、「鏡の国のアリス」をモチーフにしたお話です(「鏡の国のアリス」の方がその割合は高いでしょうか)。
 ミュージカル仕立てです。リリカルな照明、ファンタジックな衣装も目を引いたお芝居でした。
 FOXさんのレパートリーの中でも非常に人気の高い作品で、1990年9月の初演と、1992年7月と同年10月(こちらは静岡公演)の再演と、二度に渡って公演されました。
 その存在の大きさは、劇団21世紀FOX写真集「キツネのみた夢」(本公演の物販コーナーで発売中)の表紙で、その写真を飾るほど。こちらには、当時の舞台の模様を収めた写真が2点、載っています。稽古中の久美さん(若かりし頃?)のアップの写真も掲載されています。また、「電脳狐主義」というCD(こちらも本公演の物販コーナーで発売中。FOXさんの代表的な公演の音楽と、出演者のインタビューが収められたものです)では、オープニングを飾っています。
 ルイス・キャロルのお話と同じく、主人公のアリスが荒唐無稽な世界で、妙ちきりんなキャラクターたちと出会いながら冒険していく童話劇です。
 アリスだけでなく、その回りを固める登場人物たちが非常に魅力的・個性的な演技をなさっていて、一つ一つのシーンを大きく膨らませ、密度の高い舞台を作り上げていました。ストーリーのテンポはややゆっくりめでしたが、一つのシーン内の登場人物たちのやりとりが抜群に面白く、また緩急に富んだテンポで、何度、見ても飽きさせない(私はビデオで見ただけですが)、目線を変えれば幾らでも見所がある舞台でした。


△▲△久美さんの役、アリス・ドッジについて△▲△

 久美さんは主人公のアリス。10歳前後(というところでしょうか)の少女。少女誘拐団にさらわれた親友のリデルを探すため、単身、鏡の向こうの世界に旅立った、勇敢な、元気いっぱいの女の子です。ちょっぴり泣き虫なところもあるけれど、感受性に溢れた、賢くも心優しい子です。
 ルイス・キャロルのお話ではアリスにはフルネームはありませんが、彼の本名、チャールズ・ラトウィジ・ドジソンのドジソンから取って、アリス・ドッジという名前になったそうです。また、アリスが探しに行く少女、リデルの名前の由来は、アリス・リデルという実在の少女の名からです。
 大学の講師をしていたキャロルが、学寮長リデルの娘たちにしてあげたお話が、「不思議の国のアリス」の原案となっていますが、リデル家の三姉妹のうちの次女、アリス・リデルが、ロリコンだったキャロル(性的な意味合いではなく、プラトニックな感情で)の一番のお気に入りで、彼女の名がそのまま主人公の名前になったといいます。
(末次加奈さんのお話と、「新書館」刊・「不思議の国のアリス」のあとがき等より)
 アリスの衣装についてはこちら→ <衣装さん>
 久美さんが演じたアリス・ドッジ。
 一言で言うなら、尋常でない輝き。
 久美さん演じるアリスは、(ビデオからでさえ)その個性と魅力が芝居小屋全体に満ちみちていることを感じさせるほど、輝いていました。その感覚はお芝居の中で時が経つにつれ、強く感じさせてくれました。輝きって言葉がこんなにも似合う演技は他に無いかもしれません。
 「電脳狐主義」の中で、司会の山口勝平さんと宮下タケルさん(当時は忍野タケルさんという芸名。「黒の女王」という敵役でした)と対談をされていましたが、二時間半の間、積み上げて積み上げてきたもの、という久美さんの言葉は正にその通り。久美さんが演じるアリスの魅力が、時が経つにつれ客席を支配していった、と言って良いでしょう。
 とても??歳とは思えぬほど?(笑)、激しく可愛く、激しく愛らしくて、その一方で勇気と芯の強さを感じさせ、優しく賢く、茶目っ気も見せつつ、感受性に富んだ真摯で真面目な少女を演じていました。また所々で見せてくれる、コミカルな演技も魅力的でした。ここは久美さんの素のひょうきんな部分が出ていたような、そんな感じ。
 そして特筆すべきなのは、久美さんの歌。ミュージカルですから、アリスも当然、歌っていました。
 ガラスのように美しい歌声でした。歌が苦手とおっしゃる久美さんですが、10年前でも、ちゃんと聞かせられる、人の耳を引き付けることができる歌を披露していました。とりわけ、歌声の流麗さは絶品でした。
 因みに、当時のその歌の美しさは、前述した「電脳狐主義」の中に収められた一曲(「リデル」という曲)で聴くことができます。
 久美さんにとっては二時間半余り、殆ど出ずっぱりの舞台でした。大変だったとおっしゃる当時の久美さんでしたが、輝き、この二文字が全開に溢れた一人の少女、アリスを演じていました。舞台の上で、久美さんはとてつもなく輝いていたんです。


□■□再演(第24回公演)時のキャスト□■□
(現在も在籍している劇団員さんには◎印を付けています)

アリス・ドッジ
 ◎久美さん
 この物語の主人公。上述の通りです。

チェシャー・キャット
 ◎中嶋聡彦さん
 アリスと最初に出会う、鏡の国の住人。友達を探しにやって来たアリスに、色々なヒントを与える、彼女の導き役的存在です。
 キャロルの童話に出てくる、にたにた笑う、同名のあの猫ですね。でもあちらの猫は、殆ど役に立ちませんが(笑)。

アリスの父
  鹿島灘之さん(現・鹿島ぼんさん)
 呑気で穏やかな、アリスのお父さんです。

アリスの母
 ◎百々麻子さん
 優しく、活発そうな、アリスのお母さんです。
 個人的に、アリスの次に好きです☆

キャロル先生
 ◎黒瀬浩二さん
 アリスの家庭教師です。とっても頼もしげな先生、行動力のある先生、おちゃらけたところもある先生です。アリスに、リデルがいるのはきっと別の町だと教え、アリスが旅立つ切っ掛けを与えてしまったのでした。
 勿論、ルイス・キャロルがモデルですね。アリスの写真を色々と撮るところなどは、実在のキャロルと同じです。

マッドランド・ハッセル卿
  牧内利文さん
 巨大なシルクハットを被った、陽気な学者さんです。プラットホームでアリスと出会い、一緒にアザーサイドシティ行きの列車に乗ります。後半、帽子を被っていたという罪から、黒の女王に捕まっているところ、アリスと再会します。

車掌さん
  松尾貴司さん(現・松尾まつおさん)
 満席の車内に空席が二つできてしまったと、あべこべのことを言って怒り、アリスとハッセル卿を列車から追い出してしまいます。

鬼ゆりの花
 ◎百々麻子さん
 列車から下ろされたアリスが、やがて行き着いたお花畑で出会う、喋るお花たちの一輪。自分は大きな声でべらべら喋るくせに、向かい側に咲くヒナギクたちが喋ると、「お黙りなさい!」と怒って黙らせます。百々さんのイメージにぴったりです(笑)。

バラの花
 ◎竹田愛里さん
 鬼ゆりと同じお花畑に咲くお花。異様〜に、間伸びした喋り方をしますが、本当は普通に喋れたりするのでした。
 鬼ゆり、ばらの花たちとアリスがお喋りするシーンは、キャロルの「鏡の国のアリス」に、まんまそんな場面があります。

白の女王
  奈々瀬唯さん
 鏡の国を治める二人の女王のうちの一人。腰の曲がったおばあさんですが、自分のことを少女だと思い込んでいます。黒の女王にさらわれた友達のリデルを助けたいというアリスに、「白のポーン」の称号を与えます。鏡の国はチェス盤のように構成された世界。進むべき道行きをアリスに教えます。

ダムダム
 ◎河本浩之さん
ディーディー
 ◎中嶋聡彦さん
 チェス盤の4の目(森の中)で出会います。次の目に進むための道を教えてと頼むアリスを、勢いとマイペースで巻き込み、一緒に色んな遊びに興じようとします。言わば、道化コンビ。このお二人の面白さは、正に筆舌に尽くしがたいです。アリスが輝きで客席を魅了したなら、このお二人はその客席を爆笑の渦に叩き込んだと言って良いでしょう。
 「鏡の国のアリス」の、トゥイードルダムとトゥイードルディーがモデルになったのでしょうね。

大工のとっつぁん
  玉井浩さん
 いい加減、道を教えてよと怒るアリスに、ダムダム&ディーディーが紹介する、4の目で一番、まとまな仕事をしているというおじさん。燃えないゴミを集めて木を作っている、不思議……だけれど、結局、アリスをはげまそうとしながらダムダムたちと一緒に遊んでしまう、困ったおじさん。

コウモリ傘鳥の亭主
  飛矢馬剣さん
 呑気で愉快なコウモリ傘鳥の亭主です。五の目はコウモリ傘鳥の巣。傘鳥の卵から雛が返る瞬間に、アリスは立ち会います。反対の言葉(醜い→可愛い)を喋る、亭主と女房、7匹の子供たち。亭主から名前を付けられる子供たちですが、その反応も子供たちそれぞれで愉しいシーンでした。

象のピエル・ファントム
 ◎中嶋聡彦さん
 六の目(湖)で出会う、象の法律学者。ひょうひょうとしつつも、気さくな人柄。法律こそ神であり支配者と言う、法律を信奉している象です。アリスと言葉遊びをしつつ、一緒にボートに乗って、次の目に進みます。

黒の騎士
  飛矢馬剣さん
 7の目を守る黒騎士。馬の着ぐるみを腰に着けています(笑)。一応、こわもてだけれど、あんまり強くはないのでした。

白の騎士
 ◎山口勝平さん
 軟弱でナルシスティックな白騎士です。黒の騎士に襲われているアリスのピンチに駆けつけますが、てんで役に立ちません(笑)。一人、悦に入り、踊っています。黒の騎士、白の騎士、なのですが、ここは完全にギャグのシーンで、特に女性の方の受けが良かったみたいでした。

城壁男のロック
  藤間浩也さん
 黒の騎士に捕まったアリスが放り込まれる、牢屋の番人。キャロル先生曰く、岩の化け物のような岩の化け物(笑)。アリスたちの影をちょん切ると言って、嬉しそうに笑い声を上げます。何だか愛敬のある敵役です。

黒の女王
 ◎河本浩之さん
 鏡の国を支配するもう一人の女王。少女たちをさらい、その影をちょん切り、自分のドレスにしている、恐ろしい女王です。女王、だけれど、演じているのは名前を見てお分かになる通り男性です。みかわけんいち風なのです。因みにこの一つ前の再演では、忍野タケルさん(現・宮下タケルさん)が演じていて、まんま「お待たせ」というアドリブが大受けだったそうです。


◇◆◇ストーリー◇◆◇
(第24回公演時の大まかな物語の流れです)

 「さかさまだわ!」
 鏡の向こうの世界に入り込んだアリス。お芝居はそこから始まります。
 少女誘拐団にさらわれたリデルを救うため、鏡の国にやってきたアリス・ドッジ。
 彼女は大きな栗の木の下で、「こんばんは、チェルビィ」とチェシャー・キャットに声を掛けられます。最初は気味悪がっていたアリスでしたが、自分の名前や自分の目的を何故か知っている彼に興味を持ちます。チェルビィ(綺麗なこども)と言われて嬉しがったりもします。
 チェシャーキャットは、アリスにヒントを与えます。
 一つは、「チェチェチェのチェ」。アリスの旅は三つのチェから始まった。チェルビィ、チェシャーキャット、チェスナット(栗の木)。ところがチェは四つ。もう一つのチェと巡り合わなければならないのです。
 そして二つ目のヒント。チェシャーキャットはそれを歌にしてアリスに聞かせます。
   光の子にして闇に似たり
   巨人にして小人なり
   ゆらゆらと真似るよ
   濡れもせず離れもせず
   汝は誰?
   レンズに写さば姿戻るべし
 歌いながら去っていくチェシャー・キャット。訳が分からないまま取り残される彼女。
 しかしアリスの手には、「アザーサイドシティ」行きの切符。汽車に乗って別の町へ。友達のリデルを助けに行くのです。

 さてさて駅に着いたものの、目当ての汽車が見つからないアリス。
 アリスは、同じアザーサイドシティに行くというマッドランド・ハッセル卿と出会い、とにかく何でもいいから、一緒に汽車に乗り込みます。中はまったくの空席。ところが、満席の車内に空席を二つも作ってしまった、という、あべこべで理不尽なとがで、車掌に列車から下ろされてしまいます。マッドランド・ハッセル卿ともはぐれてしまいます。

 深い霧の中、戸惑うアリス。やがて霧が晴れると、そこは何と口の利ける花たちが咲くお花畑。アリスは、少女たちをさらっていく怪しい男たち・黒のポーンたちを目撃します。黒の女王の手下だと、花たちが教えてくれます。
 この世界は、二人の女王によって治められている。
 お花に水をやりにきた、もう一人の女王・白の女王にアリスは出会います。
 どこに行けば、リデルをさらった黒の女王に会えるのか。アリスの問いに、白の女王は答えます。
 黒の女王がいるのは8の目。
 彼女が見せてくれた地図は、チェス盤そっくり。アリスは気付きます。「チェチェチェのチェ」。四つ目のチェは、チェスのチェなのだと。
 白の女王は言いました。
 アリスは今から白のポーン。
 今いるのは2の目。黒の女王に会うためには、8の目に行かなくてはならない。ポーンのままでは女王(クイーン)に会う(をとる)ことはできないけれど、8の目に入れば、アリスは三人目の女王となって黒の女王に会うことができる。そう、チェスのルールです。まず、2の目からは一つ飛びで4の目へ。そしてそこからは一つずつ進むのです。

 リデルを救うため、アリスの長い長い冒険が始まったのでした。
 4の目では、ダムダム&ディーディーに遊ばれ……
 5の目では、コウモリ傘鳥の巣で雛の誕生と名付けに立ち会い……
 6の目では、象の法律学者と一緒にボートで湖を渡り……
 そして7の目では……
 アリスは黒の騎士・ブラックナイトに襲われ、捕らわれの身になってしまいます。「7の目では白い馬の力を借りなさい」という白の女王の言葉に従い、アリスは助けを求めますが、駆け付けた白の騎士・ホワイトナイトはまるで役に立たなかったのでした(笑)。

 牢屋に入れられてしまうアリス。すると何とそこには、マッドランド・ハッセル卿とキャロル先生の姿が。キャロル先生はアリスを追って、この鏡の国にやって来たのでした。
 ところが、帽子を被っていたという罪で捕らわれの身に。帽子を被ると死刑、というのが、この国の法律。アリスたちは明日、裁判の上で死刑となり、影をちょん切られてしまうことに。そしてアリスの影はちょん切られた上に、黒の女王の新しいドレスになってしまうことに……。
 アリスたちは何とか牢屋から脱出する方法を考えますが、いいアイデアが浮かびません。そこへチェシャー・キャットが現れ、ヒントを与えてくれます。番人のロックを倒す方法、それは、「岩をも転がす歌がある。答えは問いの中にあり」。
 翌朝、アリスたちを裁判にかけるため、ロックが牢屋を開けにきます。「おまえなんか転がっちまえ!」。キャロル先生が叫ぶと同時に、アリスたちはロックン・ロールを踊ります。岩をも転がす歌とは、ロックン・ロールのことでした。
 しかし、ロックはやっつけることができたものの、今度はブラックナイトが! ピンチに陥るアリスたちでしたが、そこへホワイトナイトが現れます。ばかばかしい決闘を繰り広げる二人(笑)。そしてばかばかしいホワイトナイトの攻撃で(笑)、取り敢えずは難を逃れることができたのでした。

 8の目を探すアリスたち。
 が、見つける前に、遂に黒の女王が姿を現します。兵士らによってアリスたちは取り押さえられてしまいます。リデルを、誘拐された少女たちを返してと、アリスは黒の女王に言いますが、聞く耳持たず。問答無用で裁判が行われます。この国ではみだりに帽子を被ってはならない。そして罪人は裁判の上、死刑とする。
 黒の女王に食って掛かるアリスでしたが、白のポーンに口など利くものかと、彼女に一蹴されてしまいます。死刑を宣告され、影をちょん切るはさみが迫ってきます。
 8の目を開く言葉があるはず。
 しかし「チェチェチェのチェ」、四つ目のチェはチェスで使ってしまった。と、これがチェスならチェック(王手)じゃな、とマッドランド・ハッセル卿が嘆きます。アリスは気付きました。8の目を開く言葉、それは「チェック」だと。「チェック!」と叫ぶアリス。すると8の目が開かれ、アリスはポーンからクイーンへと変わったのでした。そう、これで黒の女王と対等に口が利けるようになりました。
 誘拐された少女たちを返しなさいと、アリスは黒の女王に迫ります。彼女たちはこの国で帽子を被ったりはしなかったはずです! 彼女たちの影をちょん切る権利は、黒の女王、あなたには無いはずです!
 強い語気で迫るアリスに、とうとう黒の女王は白状します。
 少女たちを誘拐したのは自分。そして自分が着ている黒いドレス。これは少女たちの影で作ったドレス。歳を取っておばあさんにならぬように、少女たちの影に身を包んでいなければならないのだと。
 ところが、リデルの影はそこには無かったのでした。リデルなどという女の子は知らないと女王は言います。
「リデルはどこ!」
 怒気を込めて叫ぶアリス。

 黒の女王は言います。
 リデルとはたぶん自分のこと。リデルなどという女の子はきっと最初からいなかった。アリスは自分自身の影を追ってきたのだと。
(アリスのモデルは前述したように、アリス・リデルという実在の少女。アリスがリデルを、自分で自分を、ということから、リデルという名前が使われたそうです)
 そして自分はその、あなたの追ってきたアリス。自分は50年後のアリスだと告げます。
 信じられないわ!と叫ぶアリスに、黒の女王は更に驚愕の事実を話します。
 信じられないのも無理は無い。何故ならこれは夢だから。50年後のあなたが見ている夢だから。つまり自分が見ている夢だから。少女の自分が今の自分に会いにくる夢だから。

 アリスは混乱します。
 全ては黒の女王、50年後のアリスが見ている夢、少女の自分が出てくる夢を見ている黒の女王……。
 この世界は黒の女王の夢、自分は夢に見られている自分……。
 しかしこれは、自分が見ている夢かもしれない……。
 しかしそう考えている自分を、夢に見ている黒の女王の夢かもしれない……。
 しかしそういう夢を見ている、自分の夢かもしれない……。

 しかしそう自分に言い聞かせているアリスが、黒の女王の夢の中のアリスなのかもしれないのです。
 どちらが見ている夢なのか。堂々めぐりの数字、8……その8の目の上で、堂々めぐりの思考が続きます。
 黒の女王は自信たっぷりに告げます。これは自分の夢。自分が目を覚ませば、アリスたちは消えて無くなるのだと。
 アリスは思い出します。チェシャー・キャットのヒントがもう一つ残っていたのです。
「光の子にして闇に似たり
 巨人にして小人なり
 ゆらゆらと真似るよ
 濡れもせず離れもせず
 汝は誰?」
 それは影だとアリスは気付きます。
「レンズに写さば姿戻るべし」
 写真に撮ればいいのだとアリスは気付きます。でもどうして?と尋ねるアリスに、キャロル先生が答えます。実体(本物の映像)を影にして写すのが写真。本物を写せば影になる。アリスは閃きました。それでは、影を写せば本物になって出てこないかしら。
 アリスは、この世界を、自分を、黒の女王のドレスを、キャロル先生に写真に撮ってもらいます。
 そう、もし黒の女王の言う通りこれが女王の夢で、自分たちが鏡に写った影のようなものなら、写真に撮れば自分たちは本物になり、立場が逆転するかもしれないからです。
 写真を撮りまくるキャロル先生。しかし黒の女王は不敵な態度です。そんなことをしても無駄。自分が目を覚ませば、皆、消えて無くなる。そしてアリスは50年後、自分が見たこの夢を見ることになる……。こう笑を上げながら消えていく女王……。

 そして全てが消えて……。

 アリスは自分の家に帰ってきます。鏡の国で出会った住人たちと共に。
 びっくりするパパとママに、アリスは言います。これはみーんなあたしが見ている夢。あたしが目を覚ませばぜーんぶ消えてしまう。
 そう、アリスたちは勝ったのでした。
 鏡の国の住人たちと、アリスは仲良くパーティをします。
 そしてその後は……二階の部屋で眠っている自分を、アリスはそっと起こしに行くのです。
 これからパーティ。でもあんまり騒いじゃ駄目。二階で眠っている自分が目を覚ましてしまうから☆
 そして。
 アリスが目を覚まします……。
                   〜Fin〜


▽▼▽私個人の思い▽▼▽
(50回記念公演を迎えるにあたって)

 正直、「アリス〜」はもう公演されることは無いだろうと思っていました。最後の再演から、もう10年近くも経とうとしているし。さる久美さんファンの先輩から、このお芝居のビデオを借りて観た後は、こういう素敵な公演が過去にあったんだと、何と言うか、既にして思い出と化してしまったのでした。
 それ故、このお芝居が50回記念公演のレパートリーに決まったというニュースを、FOXさんの公式HPで知った時は、心臓が止まるほど驚きました。「嘘……!」という感じ。で、その後は体中の血が一気に騒ぎ出しました。「どうしようどうしようまず何しよう」といった具合です。そんな気持ちの中、思い付きでできたのがこのコーナーです。嬉しいから、とにかく嬉しくてしょうがないから、そして、楽しみだから、とにかく楽しみでしょうがないから、何か「アリス〜」のことを書こうという一心で始めました。
 上述しましたが、「アリス〜」はとてつも無く面白いお芝居で、久美さん演じるアリス・ドッジは心の中を熱く眩しく照らすほどに輝いていました。久美さん演じるアリスの色々な魅力、色々な顔が渾然一体となって、尚且つそれらを越えて胸に届くのが、輝きという言葉でした。ビデオからでさえ、そう感じたのです。ですから、今、凄く興奮しています。
 そして同時に、希望があります。それは、サクラ大戦歌謡ショウの「アイリス」とは一線をちゃんと引ける、彼女と同等以上に魅力ある「アリス」を見せてほしい、ということです。
 歌って踊るミュージカルという要素、小さな女の子という役柄(更には語感の似た名前)から、やっぱり比べられるのかな?という懸念があります。見方や思いは人それぞれだけれど、個人的には、「アイリス」の影を微塵も感じさせない、比較する意識もすっかり消えるほど、強い魅力を持った「アリス」を演じてほしと思っています。勇敢で賢く、強い心を持った少女、そして能動的・積極的な少女、これらは「アイリス」との一番の違いだと思います。Version Up! の「アリス〜」であるということ、また肝さんの演出次第、そして現在の久美さんの役者としての実力や心持ちなどから、雰囲気も多少、変わるかもしれませんが、ともあれ「やっぱりあなたが一番いいわ」の「麗歌ありな」のような、一生、心に残るような役を期待している次第です。
 遡ること「F・f・ーエフー」の公演前、雑誌のインタビューで「よし子」という役について、久美さんは「アイリス」とは違うということを些か強調していました。やっぱり、「サクラ大戦」「アイリス」というものが有名になった以上、違う部分を見てほしいという意識はあるのではないかと思います。「アイリス」は久美さんのほんの一部分です。久美さんの魅力は、はち切れんばかりにまだまだいっぱいあります。私が観たことの無い、過去のFOXさんのお芝居の中にも、久美さんの魅力は多数あったことでしょう。
 ともあれ、「アリス・ドッジ」が舞台の上で輝く日を心待ちにしている毎日です。


☆★☆るい的ピックアップ[迷]シーン☆★☆
(第24回公演時より)

 名シーンをピックアップしようとすると、全てが全て名シーンになってしまい、全部が全部、お気に入りになってしまうのが、「アリス イン ワンダーランド」です。
 なので、[迷]として、ピックアップしてみました。私の超個人的なし好により選んだ、お気に入りシーンです。



≪≪≪50回記念公演アリス≫≫≫

 このコーナーのメイン!
 2002年5月28日〜6月2日……50回記念公演として打たれたお芝居、「アリス イン ワンダーランド 〜Grade ap Version! ぴーちくぱーちく かしましい〜」についてのレポートです。
 楽しかった「アリス〜」、可愛かったアリス、素敵だった久美さんの思い出です。




○△□アリス・エンサイクロペディア●▲■

 「アリス〜」に関するキーワードを色々、集めて、ちょっぴりおもしろおかしくまとめてみた事典です。
 因みにアリスは日本人なので、アルファベット順ではなく五十音順です。



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